SDGs+Beyond いのち輝く未来社会 ウィーク
8人のテーマ事業プロデューサーと考える“いのち”とSDGs+Beyond
2025年日本国際博覧会協会
本プログラムは、テーマウィーク全体協賛者と連携して協会が企画・実施する「アジェンダ2025」の一つです。「8人のテーマ事業プロデューサーによる「いのち」に関する各シグネチャーパビリオンの振り返りと将来のSDGs+Beyondへの展望は?」というセントラルクエスチョンを中心に、トークセッションが展開されます。
映像記録有り
対話プログラム
- その他
| 同時通訳 | 提供する |
|---|---|
| 発信言語 | 日本語及び英語 |
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アジェンダ2025
主催プログラム
- 開催日時
-
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2025年10月12日(日)
13:30 ~ 15:00
(開場 13:00)
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- 開催場所
- テーマウィークスタジオ
プログラム内容
*字幕:YouTube動画の右下「歯車」マークの「字幕」よりお選び下さい。(複数言語、音声が重なる際等、字幕が掲出されない場合があります)
大阪・関西万博のテーマウィークの最後を飾る、特別なパネルディスカッションの第一弾は、8人のテーマ事業プロデューサーが一堂に会し、それぞれが手がけてきたシグネチャーパビリオンでの挑戦を振り返ります。
万博の準備段階から掲げてきた根源的な問い――「いのちとは何か」。
この問いを出発点に、多様なテーマや表現を通じて「いのち」を探求してきたプロデューサーたちが、今あらためて自らの取り組みを語り、未来に向けた新たな視点を提示します。
ここでは単なる振り返りにとどまらず、「いのち」を未来社会のデザインにどう生かしていくのか、次世代へどのような挑戦をつなげていくのか、一人ひとりの思いやビジョンが披露されます。
1時間半にわたるこの最終セッションは、万博が目指す「いのち輝く未来社会」の全体像を改めて想像し、共創に向けての出発点となることでしょう。
大阪・関西万博テーマウィークの集大成として、そして未来への扉を開く対話として、ぜひご参加ください。
実施レポート
【プログラム要旨】
本セッションでは、大阪・関西万博を象徴する「いのち輝く未来社会」というテーマを体現した8人のテーマ事業プロデューサーが一堂に会し、それぞれが手がけたシグネチャーパビリオンの成果を振り返るとともに、万博を通して見えてきた「いのち」への多様な視点、そしてSDGsを超えた“Beyond”の可能性を議論した。登壇者は様々な視点から「いのち」を探究し、持続可能性を超えた創造的未来の在り方を提示した。
【宮田裕章氏 発言要旨】
宮田氏は、8人のテーマ事業プロデューサーがそれぞれ独自の世界観と哲学をもって「いのち」を描き出したことの意義を強調した。彼にとって万博とは、単なる展示やショーケースではなく、「未来を構想し、共に創る」ための対話の場であり、人間の想像力と社会の可能性が交錯する生きたプロセスそのものであると発信した。
宮田氏は冒頭で、この8名のプロデューサーが一堂に会するのは極めて稀な機会であり、それぞれの個性と専門分野が融合することによって、従来の万博が持つ「統一された物語」や「単一の未来像」を超える多層的なヴィジョンが浮かび上がったと語った。各人のシグネチャーパビリオンは、科学、芸術、哲学、倫理、テクノロジーといった異なる次元の探究を通じて「いのち」という普遍的主題に多角的な光を当てた。その多様性がぶつかり合いながら共鳴しあうこと自体が、今回の大阪・関西万博が目指した「いのち輝く未来社会」の象徴的な体験だったと述べた。
宮田氏はまた、半年間にわたる会期を通じて、来場者数や満足度の高さ以上に注目すべきは、「問い続ける来場者」が増えたことだと述べた。各パビリオンは答えを提示する場ではなく、「なぜ」「どう生きるのか」といった根源的な問いを共有する装置として機能した。彼は、「万博はもはや“見る”ものではなく、“共に考える”体験へと変化した」と強調する。こうした転換は、SDGsが提唱する“目標の達成”を越え、人々が自らの価値観を再構築し、“Beyond(その先)”を共に創造していく出発点となった。
さらに、宮田氏は今回のテーマウィークと万博本体の連動性にも言及した。各国パビリオン、市民イベント、学術セッションが有機的に結びつくことで、「知の断片」が共鳴するネットワークが形成されたという。これにより、万博は単なる展示の集合体ではなく、「世界中の叡智を響き合わせる共創的場」として機能した。
締めくくりとして彼は、「未来は一つではなく“Futures(複数形の未来)”である」と述べた。これは、トップダウン型の技術的ユートピアではなく、個々の文化・思想・生命が自らのリズムで未来を紡ぐという多様性の肯定を意味する。彼にとって“いのち輝く未来社会”とは、単一の完成形を目指すことではなく、相互の響き合いと生成のプロセスそのものを価値とする社会である。
宮田氏の総括は、万博が「解を示す場」から「問いを共有し続ける場」へと変容したことを示すものであり、まさにSDGs+Beyondの理念を象徴する言葉であった。
【福岡伸一氏 発言要旨】
生物学者の福岡伸一氏は、自身のシグネチャーパビリオン「いのち動的平衡館」を通じ、生命の本質を「闘争」ではなく「共生」と「利他」の連鎖として提示した。開幕当初は懐疑的な声もあった万博だが、会期を経て多くの来場者が複数回訪れ、「いのち」を自らの体験として捉える場となったと振り返る。特に、ユスリカの大量発生からトンボやツバメ、コウモリの飛来によって自然が均衡を取り戻した出来事を「生命の動的平衡の実演」として紹介し、人間の管理を超えた生命の自己調整能力を実感する機会となったと述べた。
同館の根底には「動的平衡(Dynamic
Equilibrium)」という概念がある。生命は固定的な構造ではなく、常に入れ替わり続ける分子の流れによって維持されており、その本質は「変化しながら安定すること」にある。福岡氏は、進化を「闘争の歴史」と捉える従来の視点を退け、「共生と利他の歴史」として再定義した。人間社会がこの生命原理を忘れたとき、持続可能性は失われると警鐘を鳴らした。
SDGs+Beyondの観点から、福岡氏は「人間だけがサステナブルでない世界をつくってしまった」と指摘する。生命は余剰をため込まず他者に手渡す“フロー”の仕組みで成り立っているが、人間社会は“ストック”を積み上げ、分断を生み出している。真の持続可能性とは、生命のように他者と分かち合い、循環を維持することだと強調した。
また、1970年大阪万博が「軸構造」だったのに対し、2025年万博の「大屋根リング」は細胞膜のように“内と外をつなぐ揺らぎの場”であると述べた。人間社会も同様に、閉じた秩序ではなく相互に影響を及ぼし合う柔らかなネットワークへと進化すべきだという。さらに、現代社会の「ジョブディスクリプション型(職務記述型)」の組織を批判し、生命が示す「ステムセル型(幹細胞的)」の柔軟性――状況に応じて役割を変え、互いに助け合う仕組み――に学ぶ必要があると訴えた。
最後に彼は、「生命は設計ではなく発生によって形づくられる」と述べ、過剰な管理や計画に頼らず、ゆらぎや生成の中に秩序を見いだすべきだと結んだ。生命の原理に立ち返り、共生と循環を社会の基盤とすること――それこそが“SDGs+Beyond”の核心であると語った。
【河森正治氏 発言要旨】
河森正治氏は、自身のシグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」において、命がつながり、巡り合い、変化し続ける“連鎖反応”をテーマに掲げた。彼は、生命を一方向的に消費するものではなく、互いに関わり合いながら変化し続ける「合体変形のプロセス」として表現したいと語った。
展示の中心では、来場者が魚や鳥、微生物など“他の生命の視点”を体験することができる仕掛けを導入。人間が魚を食べるとき、「魚と合体して新しい生き物になった」と考える視点を提示し、生命同士が対等に関わる関係性を体感させた。河森氏は「命を食べる」という行為を“支配”ではなく“共生”として再定義し、人間中心的な世界観からの転換を試みた。
彼はまた、「命とは無限の連鎖反応である」と述べ、思考や感情の交流までも“合体変形”の一種と捉えた。例えば読書によって他者の思想を取り込み、自らの思考と融合させることも、命の連鎖の一形態であると説明した。展示では、観客が自然・他者・社会と結びつき、心身の変化を感じるよう構成されており、その体験を通じて「命の輝きとは、変化し続けること」だと実感できるよう設計された。
河森氏の発言には、クリエイターとしての想像力と生命観が重ねられている。彼は、これまで手がけてきたアニメ作品で描かれる「合体変形」のモチーフを、エンターテインメントの枠を超えて“生きる哲学”として捉え直した。宇宙や太陽の光、空気や水、大地の微生物など、すべての存在は互いに作用し合いながら自己を変化させており、その連鎖の中に“いのちの普遍性”があると語る。
また、「社会生活の中では個としてのルールを守ることも必要だが、同時に我々は無限の連鎖の中に生きる命である」と述べ、人間が他の生命とのつながりを再認識することの重要性を訴えた。パビリオンでは、映像・音・空間演出を通じてこの哲学を具現化し、来場者に生命の躍動と循環を感じさせる体験を提供した。
河森氏の作品は、科学や芸術の領域を越えた“感覚的共生の体験”として、多くの来場者に「自分もまた自然の一部である」という気づきを与えた。彼の言葉どおり、「いのちの輝き」とは、他の命と響き合いながら変化し続けることそのものである。
【河瀨直美氏 発言要旨】
河瀨氏は「Dialogue Theater - いのちのあかし -
」において、“世界の至るところにある分断を明らかにし、対話により解決を試みる実験場”をテーマに掲げた。展示物を設置するのではなく、人と人が真正面から向き合い、心を通わせる一期一会の対話が1日9回行われている。
このシアターでは、99人の“話者”から選ばれた一人と、来場者からランダムに選ばれた一人と約
10
分間語り合う。10分間で対話が突然終わるのだが、その先は、観客それぞれが話者になったつもりで生きていく、人生というのは心次第で変わっていくということを実感する。河瀨氏は、「みんなの中にもいたわたし、わたしの中にもいたあなた」を持って帰ってほしいと述べた。
また、特別対話をいくつか開催した、その中には4月21日にパレスチナとイスラエルの女性についての映像作品に焦点を当てた回では、イスラエルから招いた監督とそのお母さんが「私たちが流す涙の色は同じだ」と語った。
また、ウクライナのキーウから戦場カメラマンを長崎の原爆記念日に招き、「争いを生む憎悪の感情を手放したい」と語ったのが印象的だった。
4月25日には末期がんの夫婦が対話を行い、「最後の日は永遠に続いていく、終わっていかない」と語った彼はその60時間後にこの世を去った。河瀨氏は、“対話を通じた「いのち」の再創造”をレガシーとして未来へ繋げていきたいと話した。
会期中、このシアターでは1600
回を超える対話が行われた。河瀨氏はそれらをすべて映像として記録し、アーカイブ化を進めている。彼女は、「答えのないパビリオン」として、観客の心に“続き”を託すことを意図したと語る。
河瀨氏のメッセージは、万博全体への平和人権への提言でもあり、8つのプロジェクトの中でも平和人権のど真ん中に向き合った素晴らしい取り組みである。
【小山薫堂氏 発言要旨】
小山氏は、パビリオン「EARTH
MART」において、「食」を通して“いのち”を見
つめ直すことをテーマに据えた。彼は冒頭で自作の詩「いのち」を朗読し、「食べられることは、他の命を生かすこと」「『いただきます』は感謝の言葉、『ごちそう
さま』は明日を生きる誓いである」と語り、食べることの倫理的・精神的価値
を改めて問いかけた。
パビリオンは、スーパーマーケットを模した構成となっており、人間が一生のうちに食べる卵の数約
2 万 8 千個を視覚化したり、魚や野菜、動物
の命を感じられたりする展示を通して、「ひとりの人間のいのちをつむぐため、どれだけ他のいのちをいただいているのか?」を問いかけるよう設計されていた。また、世界各地の
食卓の写真を並べ、文化や経済格差による違いを示すことで、「食べるとはなにか?」を考えるきっかけを与え、「地球という食卓を囲んで一緒に生きることが、食べることである」という視点を提示した。
また、展示を通して、来場者が「食べるという幸せ」を感じること、そして1日3回「いただきます」を言うことによって、他者を慮り「感謝のスイッチ」を押すきっかけになることが、言葉の価値の再発見に繋がることを期待した。
来場者からは「やさしい気持ちになった」という感想があり、それを紐解くと、このパビリオンは「食をきっかけに、利己的な考えを改める場所」になったと述べた。
小山氏は「SDGs+Beyond」の理念への考え方として、既存のSDGsの概念を単に“超える”ということではなく、新たな仕組みを作るべきだと提案。ひとつのアイデアとして、世界各国の言葉や日本の方言で、その言葉や概念が知られていないものが多々あるので、毎年、国や地域毎にその言葉を発表し、共有しあうことを挙げた。
最後に、この万博で得た気付きを日常のなかでどれだけ思い出せるか、が大切であると伝えた。それは「心」と「まなざし」によってものの見え方や感じ方が変わるということであり、やさしい心をもって人や自然、地球に接することが「SDGs」であるという解釈を提示した。その上で、価値観が異なる人たちがつながるためには、「おいしい」や「美しい」などの感動体験を共有し、一緒に心を震わせることが大事であり、そのためには文化・芸術が必要であると締めくくった。
【石黒浩氏 発言要旨】
石黒浩氏は、自身のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」で、人間とテクノロジーの関係性を問い直した。彼は、「いのちとは何か」「人間と機械の違いはどこにあるのか」という根源的なテーマを、科学と哲学の交差点から探究した
展示の中心には、「祖母と孫の物語」を描いた映像作品があった。そこでは、祖母が亡くなった後、その記憶と人格をアンドロイドに引き継ぐかどうかを孫が葛藤する姿が描かれた。人間の記憶がAIに宿るとき、それは「命の延長」なのか、それとも「別の存在の誕生」なのか――来場者に深い思索を促す構成となっていた。
石黒氏は、この作品を通して「テクノロジーが命をどこまで再現できるのか」という倫理的・存在論的問いを提起した。展示後のアンケートでは、「アンドロイドになりたい」と答えた人は約25%にとどまった一方で、「大切な人の記憶を残せるなら賛成」と答えた人は半数近くに上ったという。石黒氏は、「賛否の分かれること自体が重要であり、来場者の93%が“いのちの意味を考えた”ことが何よりの成果だった」と強調した。
彼は、AIやロボットが進化する現代において、「人間らしさとは何か」を再定義する必要があると述べた。感情や共感といった人間特有の能力が、今やテクノロジーによって模倣可能になりつつある。だからこそ、人間が自らの“存在意識”を問い直す時期に来ていると語る。石黒氏は、「人間はテクノロジーを恐れる必要はない。むしろ、自らが作り出したものを通じて、自分自身を見つめ直すべきだ」と述べ、テクノロジーを“自己理解の鏡”として捉える視点を提示した。
さらに彼は、SDGs+Beyondの文脈において「人間とテクノロジーの共進化」が重要になると指摘した。テクノロジーは人間社会の課題を解決する道具ではなく、人間の可能性を拡張し、新しい倫理や価値観を生み出すパートナーであるべきだという。AIやロボットの進化が避けられない未来だからこそ、社会全体が“人間中心のテクノロジー観”を再構築する必要があると訴えた。
【中島さち子氏 発言要旨】
中島氏は、パビリオン「いのちの遊び場
クラゲ館」を通じて、“多様ないのちの、創造性の民主化”を体現した。彼女が目指したのは、誰もがつくる(創造の)喜びにアクセスできる社会であり、そこでは障害や国籍、年齢、立場といった境界を超えて存在そのものが価値となる。中島氏は、「創造は特別な才能ではなく、すべてのいのちに内在する多様な力」であり、それを引き出す場をつくることが今回のパビリオンの使命だったと語った。「クラゲ館」は、光と音、そして動きによって空間全体が呼吸するように変化する体験型の遊び場である。クラゲを象徴とした理由について中島氏は、「いのちや創造性にとって大切な、”ゆらぎのある遊び”から閃いた」と説明する。クラゲの透明な身体は、固定化された自己を超え、ゆらぎながら他の存在と協奏しており、「時に言葉では説明しきれない何か」の大切さを伝える存在でもあると語った。
このパビリオンの最大の特徴の一つは、重度障害者や難病患者、視覚・聴覚に制約を持つ人々がアテンダントやボランティア、制作チームの一員として参加している点にある。中島氏は、制作過程から「多様な存在が共に創る」という精神を実践し、「多様性とは、共に存在を許容し、共に未来を編むことだ」とした。また、海外からもモザンビークやガーナ、リベリア、ヨルダン、イタリアなどの若者やアーティストが参加し、対話やものづくりや音楽・文化、教育などを通じて、国境を超えた共創・協奏のネットワークが劇的に広がった。自由入館スペースでは270ほどのワークショップが開催され、40ほどの国とのコラボがあり、日々多くの老若男女が自由に遊び、賑わった。予約スペースでは生演奏が即興的に5700回ほど繰り広げられ、やはり多様な存在が共にいのちを祝った。
展示では、来場者が触ったり動いたりすることで音や光が反応したり、空間を“演奏”することができる仕掛けがあり、中島氏は、「世界は多様な鼓動で動いており、その違いが響き合うことでいのちの豊かさが生まれる」とした。クラゲ館では、その“鼓動の違いの協奏”が可視化・可聴化され、誰もが自分のペースで他者と共鳴・協奏できる社会の姿を示していた。彼女は、多様な存在が互いの存在を聴き合いながら自分らしく存在する様子を“いのちの音楽”と表現した。
中島氏は最後に、「私たちはみな、多様で爆発的な創造性を持っている」と語り、SDGs+Beyondの理念を、そうした創造性を開いていく社会を模索する“創造性の民主化”として提示した。クラゲ館は、障害や国境を越えて誰もが共に奏でる未来社会のプロトタイプであり、「いのち輝く未来社会」のモデルとして位置づけ、次は社会実装が重要だと述べた。
【落合陽一氏 発言要旨】
落合氏はシグネチャーパビリオン「null²」を通じて、人とテクノロジー、物質と時間、そして記憶の関係を問い直した。彼は、万博という一過性の出来事を「終わる展示」ではなく、「変化し続ける生命体のようなプロジェクト」として捉えたと述べ、来場者やクリエイターがその一部となって関係を紡いでいくことにこそ、いのちの本質が宿ると語った。
落合氏は、会場全体を「人々の意識と情報が循環する有機体」と見立て、SNSを通じて市民や若者が自発的に発信し、熱量を共有したことを高く評価した。「中央のメディアが冷淡でも、市民が自ら熱を生み出した」と振り返り、これこそが“いのち輝く未来社会”の新しい形であると強調した。
彼はまた、パビリオン運営にあたり、クラウドファンディングで「膜の欠片」を配布したエピソードを紹介した。来場者が「新品よりも使い込まれたものがほしい」と口を揃えたことに感銘を受け、「傷のあるものにこそ“記憶”が宿る」と語った。人々が手に取ったその欠片は、単なる素材ではなく、「万博という体験の記憶」を共有する象徴となったという。
この発想の背景には、「物質は使われ、触れられ、時間とともに変化してこそ価値を持つ」という落合氏独自の美学がある。彼は「廃材をただ再利用するだけでは意味がない。人が使い、思い出を刻んだものを再び循環させることが“生きたリサイクル”だ」と語り、SDGs+Beyondの理念を、物質的な再生から“感性的な循環”へと拡張して提示した。
また、1970年万博を引き合いに出し、「岡本太郎や丹下健三、磯崎新らが生み出したモチーフは、その後の人生と創作の中で生き続けた」と述べた。自らの作品も、万博をきっかけに新たな記憶として他者の中に息づき、10年後、20年後に再び出会えるような存在でありたいと語った。「誰かが“あのときヌルヌル館で肌が焼けた”と笑って思い出してくれたら、それがレガシーになる」と笑みを交えて述べ、万博を“終わりではなく始まり”と捉える姿勢を示した。
【ディスカッション要旨】
ディスカッションでは、8人の登壇者がそれぞれの専門分野から“SDGs+Beyond”の未来像を語り合った。石黒氏は「人類が次に進むべきは、AIと共に進化する文明だ」と提起。AIは敵ではなく、人間の感情と知性を拡張する存在であり、恐怖ではなく共創の対象として捉えるべきだと述べた。彼は「命の定義を再構築することが次世代社会の礎となる」と語った。
福岡氏は、生命は余剰をため込まない「利他的な原理」による「共生・協力・利他」の連鎖だと捉え、人間が「設計的」に物事を作りすぎてきたことを踏まえつつ、生命本来の「発生的」な原理に立ち返る必要があると説いた。中島氏は、教育や人材育成の現場には「問いを生み出す力」と「ごちゃまぜの遊び場」が必要だ、と創造性(アート力)と包摂が“Beyond”の肝だと語り、河森氏は、命を合体変形する「無限の連鎖反応」と捉え、人間以外の対等な視点を体験することで、連鎖を感じて感動しているときこそ「命は輝く」と提案した。
河瀨氏は、「対話は理解よりも共感を生む」と述べ、分断を乗り越える力としての“聞くこと”の尊さを語った。小山氏は「食卓に平和が宿る」として、食を通じて他の命に感謝し、共生の倫理を育む文化の拡大を提唱。落合氏は、クラウドファンディングで傷のある廃材が新品より支持された例を挙げ、人々はモノそのものではなく「体験の記憶」や「物語(ナラティブ)」を求めていると分析。それがリサイクルを超えた新たな豊かさにつながると語った。
最後に宮田氏はそれらの意見を総括し、SDGs+Beyondの達成には、お金や経済で測れない新しい価値をデジタル技術も含めて創出する必要があると指摘。その鍵となるのがSDGsに欠けている「文化」と、万博のテーマである「いのちの輝き」だと述べた。未来は、地域の記憶や歴史と結びついたボトムアップな活動によって築かれるべきであり、その営みこそが次のBeyondに繋がると締めくくった。
出演者情報
登壇者
宮田 裕章
慶應義塾大学教授
慶應義塾大学教授。2003
年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)
早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科
医療品質評価学講座助教を経て、2009 年 4
月東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座
准教授、2014 年 4 月同教授(2015 年 5 月より非常勤)
、2015 年 5
月より慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
教授、2020 年 12 月より大阪大学医学部 招へい教授
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石黒 浩
大阪大学教授、ATR 石黒浩特別研究所客員所長
遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事.人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者.2011年,大阪文化賞受賞.2015年,文部科学大臣表彰受賞およびシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞.2020年,立石賞受賞.
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中島 さち子
音楽家、数学研究者、STEAM 教育家
音楽家・数学研究者・STEAM 教育者。
(株)steAm
代表取締役、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー、内閣府STEM
Girls
Ambassador。国際数学オリンピック金メダリスト。音楽数学教育と共にアート&テクノロジーの研究も進める。
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©蜷川実花
落合 陽一
メディアアーティスト
1987年生まれ、2010年頃より作家活動を始める。境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開。筑波大学准教授、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)テーマ事業プロデューサー。
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福岡 伸一
生物学者、青山学院大学教授
1959年東京生まれ。 生物学者、作家、青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。
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河森 正治
アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエーター
アニメーション監督、企画、原作、脚本、映像・舞台演出、メカニックデザイナー等を手がけるビジョンクリエーター。
慶応義塾大学在学中に原作者の一人として携わったTVアニメーション『超時空要塞マクロス』、そこに登場する三段変形メカ、『バルキリー』のデザインも担当。劇場作品『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』で23歳の若さで監督に抜擢される。『マクロス』シリーズ以外にも『地球少女アルジュナ』、『アクエリオン』シリーズ、メカニックデザイナーとして、『機動戦士ガンダム0083スターダストメモリー』、『攻殻機動隊』、『サイバーフォーミュラ』、『アーマード・コア』、ソニーのエンターテインメントロボット“AIBO”『ERS-220』、日産デュアリスCMメカ『パワード・スーツ デュアリス』、ソニースマートウォッチ『wena』のデザインをするなど幅広く活動。
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小山 薫堂
放送作家、京都芸術大学副学長
1964年熊本県生まれ。放送作家。脚本家。京都芸術大学副学長。日本大学芸術学部在籍中に放送作家としての活動を開始。「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」「世界遺産」など斬新なテレビ番組の構成を手掛ける。脚本を担当した映画「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。文化庁「日本博」企画委員、農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員、日本最大級の若手料理人コンペティション「RED U-35」総合プロデューサー、などをつとめる。熊本県のPRキャラクター「くまモン」のプロデュース、京都市「京都館」館長など、地域創生のプロジェクトにも数多く関わっている。
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©LESLIE KEE
河瀨 直美
映画作家
生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける映画作家。一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリーフィクションの域を越えてカンヌ映画祭をはじめ、世界各国の映画祭での受賞多数。代表作は『萌の朱雀』『殯の森』『2つ目の窓』『あん』『光』『朝が来る』など。世界に表現活動の場を広げながらも故郷奈良にて2010年から「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。東京2020オリンピック公式 映画総監督、ユネスコ親善大使、奈良県国際特別大使に就任し、フランス芸術文化勲章オフィシエを受勲。2025年大阪・関西万博のシニアアドバイザー兼テーマ事業プロデューサーを務める他、CM演出、エッセイ執筆、俳優などジャンルにこだわらず活動を行う。プライベートではお米を10年以上作り続けている。2026年2月には新作劇映画公開予定。
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