グリーンエイジの準備と並行して、社員たち自らの発案で取り組んだチャレンジがある。2022年8月末に開設したH2Oの新オフィスの一角。社員交流スペース「コラボレーションエリア」に並ぶ、16台のお手製テーブルが成果物だ。印字された2次元コードをスマートフォンで読み取ると、社員たちが間伐現場に足を運び、裁断した木を組み立てた際の写真や声が生き生きとつづられる。
この体験を地域住民にも広げ、大阪府民全体のプロジェクトに昇華させられないだろうか。サステナビリティ推進部の提案がCo-Design Challengeのコンセプトになった。西田は部長を務める際、会社の歴史や創業の理念を改めて振り返り、つくづく感じたことがある。
「私たちはグローバルカンパニーというより、ローカルカンパニー。企業価値をつくってくれたのは、“阪急さん”“阪神さん”や“イズミヤさん”などと愛着をもって接し、地域の一員として育ててくれたお客様であり、地域の方々。恩返しをするのはもちろん、万博後の未来に“恩送り”していかなければ」。Co-Design Challengeに込めた思いは「あくまで原点回帰」と、西田は言う。
府民を巻き込んだ一大プロジェクトはこれからが正念場だ。キーワードは三つ。「目に見える」「手の届く」「地域サイズの取り組みにする」。特設サイトで共感してもらえる府民を募り、一緒に森に足を運んで五感で感じてもらう。サイトにアップしていく記事の取材や原稿執筆にも一緒に挑んでもらおうと考えている。
「製作過程で地域の魅力を再発見したり、地域の絆が深まって一体感が高まったり。そういうワクワクする体験を地域の方々と共有したい」。ベンチはあくまで、その象徴だ。そして、「万博の後のほうが、むしろ重要」と力を込める。会場に用意するのは30脚。閉幕後に戻す場所を地域の人たちと考えるほか、作り方をオープンにすることで、31脚目が各地で作り継がれていってくれないかと思い描く。世代を超えて交流し、森に思いを馳せる場面が広がってほしい。
「主語はあくまで地域の人たち。地域と直接接点をもつ小売業だからこそできること。万博に行くだけでなく、かかわることで、色あせない記憶として残り続けるものになってほしい」。H2Oが目指すサステナビリティの真価が発揮される。
(Vol.3に続く)
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