公益社団法人2025年日本国際博覧会協会では、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に活用するための「EXPO 2025 Design System」を策定しました。
このデザインシステムは、万博のさまざまなインターフェースを統一し、アナログ・デジタルの境界線を超えて一貫した体験を提供することを目的としています。EXPO 2025 Design Systemの提供する体験を通じ、万博がより多くの人々に愛されるものになることを願っています。
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万博のデザインシステムは、生き物のように成長し、進化する構造を持っています。万博テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現するためには、スタティック(静的)ではなく、ダイナミック(動的)な要素のある「生きた」デザインシステムが必要だという想いから、この構造を採択しました。
ホリスティックな視点で、一貫性をもったブランド体験を設計します。本万博は、現実の空間と同時に、
バーチャル空間にも会場を持ちます。平面や映像、グッズのようなリアルの要素はもちろん、
AR(Augmented Reality=拡張現実)、VR(Virtual Reality=仮想現実)といったバーチャル空間においても、
同じ万博というブランドを体験できるよう配慮されています。
ルールとしてのデザインから、問いかけるためのデザインへ。本万博のテーマは、「未来社会の実験場」。
デザインシステムもまた、未来のデザインのあり方を問いかけるような実験性と革新性をもっています。
アルゴリズムを用いるなど、テクノロジーを活用し、人と機械が共創するデザインプロセスを採択しました。
このデザインシステムは今後、ソフトウェアのようにアップデートされていきます。
1970年大阪万博のシンボルである『太陽の塔』は、過去・現在・未来を貫いて生成する万物のエネルギーを
象徴しています。こうしたダイナミックなエネルギーと、大阪や関西が持つ遊び心を忍ばせたデザイン
システムを目指すことで、新たな「大阪・関西万博らしさ」を構築します。
「個のいのち」をシンボライズするIDと、「多様ないのち」が共創する未来をシンボライズしたGROUPという
デザインエレメント。このIDとGROUPは、開かれた仕組みとなる可能性をもったシステムとして
設計されています。デザインの中に「余白」を残すことで、拡張性を担保し、多くの人々へ参加と共創を
うながしていきます。
今回のデザインシステムは、「未来における人間とテクノロジーの共創」のあり方を問いかけるため、人の手による要素と、テクノロジーによる要素を組み合わせて設計されました。ロゴのモチーフでもあるCELL(細胞)が生まれ、そのCELL(細胞)が分裂や増殖を繰り返し、いのちが成長し、進化していく。こうした生命システムのあり方をビジュアライズするため、まずはアルゴリズムを設計しました。このデザインシステムは「バーチャル万博」のような仮想空間にも適用できる3Dの造形と、平面上のデザインとして展開される2Dのフラットなルックを同時に実現することができます。また、テクノロジー要素のみでデザインを完結させるのではなく、あえて人間のデザイナーがパラメータを調整したり造形を選定したりといった最終調整を行うことで、人間の意思が介入したデザインプロセスを実現しました。人と機械、双方が関わり合う余白をもった、共創的なデザインプロセスです。
大阪・関西万博のデザインシステムが表現しているのは、「はじまりも終わりもない時と、いのちの流れ」です。私たちの日々を彩る多様な生は、ひとつの中心をつくるのではなく、あるときはつながり、あるときは離ればなれになりながら、決して画一化されることのない「いのちの輝き」を教えてくれます。異なるものが融け合い、響き合うことで生まれる美しさは、私たちを新しい未来へと導いてくれるでしょう。
日本では古来より、あらゆるものに「いのち」が宿ると考えられてきました。人間や動物はもちろん、昆虫や石ころ、米粒、河原に落ちる一枚の葉まで。この世界観を現代に拡張するならば、AIやバイオ技術など、テクノロジーによって生み出される存在もまた、新しい「いのち」としてとらえることができます。私たちはいま、膨大な「いのち」に囲まれた世界の中で、個人としても、社会の一部としても存在しています。ひとつであると同時に、全てでもある。こうした考え方を表現するため、部分としても全体としても成立するようなデザインシステムを採択しました。
高度にネットワーク化した現代において、つながりは日々、強化されていきます。その一方で、過剰なつながりを拒絶するかのように、分断や対立も加速しています。紛争や格差といった人間同士の分断だけではなく、環境破壊や感染症など、人間と自然とが折り合えなくなる側面も増えています。また、肥大化する社会システムと人間との関係性も、危うい状態にあると言えるでしょう。
こうした緊張関係をほどく鍵は、循環にあると考えています。すべてにつながるのでもなく、すべてが隔てられているのでもない。出会ったり別れたりしながら変化し続けるいのち。そして、循環し続けるいのちがやがて融け合い、混沌の中から新たなものが生まれてくる。このデザインシステムが示すのは、自然中心でも、システム中心でも、人間中心でもなく、「いのち」が輝き循環する、生命中心の未来です。
多様ないのちが融け合い、
響き合う生態系
未来の生態系をシンボライズした
デザインエレメント「WORLD」。
私たち一人ひとりの目にうつる世界が
多様であるように、このエレメントもまた
様々な表情を持っています。
一枚の大きなコアグラフィックを
自在に切り取ることで、
無数のアプリケーションへと
展開することができます。
また、WORLDの見え方も一つではありません。
Inochi、Umi 、Noyama、Hikariという
四つの情景を備えています。
違う景色や色彩を見ながらも、
同じ世界を目にしている、そんな私たちの日々を
祝福したいという想いが込められています。
メインのコアグラフィックである「Inochi」は、次々と細胞分裂を繰り返し、成長するいのちを表現しています。CELL(細胞)をイメージしたプライマリーカラーによって構成されており、いのちの躍動や輝きを伝えます。
海中の鮮やかないのちが調和する様子を描いた「Umi」。海底でゆらめく海藻や、輝く鱗の海水魚、紺碧の海、波打ち際の淡いブルー。海そのものが一つの大きな生命体として機能している様子を表現しています。
その名の通り「野山」を表すコアグラフィックです。野原に芽吹く若葉や、山を染めあげる新緑、谷間を流れる澄んだ水の淡青。野山を彩るいのちの美しさをイメージしたサブカラーで構成されています。
光のエネルギーが生み出すいのちの生態系を表現した「Hikari」。夜明けの光や、木の葉の上にこぼれる太陽の光、燃えるような夕焼。私たちを取り巻く様々な光の力強さを表現しています。
WORLDのコアグラフィックと公式ロゴマークの組み合わせは、多様な展開に活用することを前提に設計されています。懸垂幕やグッズはもちろん、Webや映像など様々な場面で組み合わせて使用することで、躍動感を高め、祝祭性をもった晴れやかなムードを生み出します。