株式会社colourloop
2024.03.07
「古着や古布からベンチをつくる」色が決め手 廃棄繊維をアップサイクル Vol.1
カラーループCEO 内丸 もと子さん

捨てられる運命だった古着や古布が色ごとに再生され、大阪・関西万博の会場でベンチとしてアップサイクルされる。衣服など繊維製品の大量廃棄が問題となるなか、新しいリサイクル技術をつかった取り組みが、異業種3社のコラボレーションで実現する。どんな思いで3社はスクラムを組むことになったのだろうか。

老舗の繊維リサイクル会社「ナカノ」の横浜工場。色とりどりの古着がベルトコンベヤーに流され、従業員によってリサイクル用途先に選別されていく。数時間もすると、5メートルほどの高さに古着は積み上がっていた。ウエス製造やワタに戻す作業などは、ナカノフィリピン工場に送られてから行われる。

「毎年大量の衣服が捨てられるが、こうしてリユースやリサイクルにまわされる量はほんの一部。大半が焼却処分され、デザイナーとして仕事をするなか、常にもどかしさを感じてきた」。仕分けの山を前に、「colourloop(カラーループ)」CEOの内丸もと子が、これまでの葛藤を口にした。

 内丸は大学卒業後、菓子の包装紙をデザインする仕事に就いた。だが、どんなに工夫を凝らしても、外装ゆえにすぐにゴミ箱行き。虚しさを感じ、繊維や布をデザインするテキスタイルデザイナーに転向し、本場イギリスで腕を磨いた。ところが、仕事にのめりこむほど、また同じ疑問に行き当たった。

一生懸命デザインした衣服も数年で飽きられ、売れ残りも含め次々と捨てられてしまう。「このままでは、ゴミを生む仕事をしているようなもの。作り続けるだけではだめだ」。意を決し、京都工芸繊維大学大学院に進学し、繊維リサイクル研究の先駆者で知られる木村照夫教授(現・名誉教授)に師事した。

異なる素材が混ざった衣類は分別が難しく、技術面でリサイクルが容易ではない。また、リサイクルされても、雑多な繊維を丸ごと処理するため、くすんだ色味になり、産業用資材になるのが一般的だ。内丸はこの状況を打開しようと、古着を素材ごとではなく、色ごとに分別して綿状にし、カラフルなフェルトや糸のほか、樹脂と混ぜてFRP(繊維強化プラスチック)のシートや成形品に再生する手法を考案。好感度の高い色の組み合わせを数値で基準化することにも成功し、多様な衣類をデザイン性の高い製品にアップサイクルできる「カラーリサイクルシステム」の研究で博士号を取得した。

そして2019年、この技術を携え、大学発ベンチャー「カラーループ」を起業。様々な企業と協業し、廃棄繊維をペンケースや手帳カバーなどのオリジナル文具、トートバッグなどの生活雑貨によみがえらせ、注目を集めるようになった。
Vol.2に続く

集められた中古衣料

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