「ゴミにしないための古着の出口は大きく三つある」
今年で創業90周年を迎える「ナカノ」の取締役、藤田修司は言う。一つ目は、状態が良いものを再度市場で販売するリユース用。二つ目は、工場などで機械の油を拭き取るための雑巾「ウェス」への加工用。三つ目は、もう一度繊維の綿に戻して内装材などに再生するリサイクル原料用。「古着を回収する方法や量はいくらでも増やせるが、この三つだけでは需要そのものが頭打ち状態。ある程度の量をこなせる四つ目の出口の開拓が、いま求められている」と課題を語る。
この“出口戦略”を練るため、木村名誉教授のもとカラーループとナカノ、家具デザイン会社の「アボード」がチームを組み、様々な廃棄繊維を活用したボード製作に挑むことになった。アボードはこれまでに、ジーンズ製造時の裁断くずと樹脂を混ぜたデニムボードや、ペットボトルのリサイクル繊維でつくる新素材「硬質フェルト」を開発。昨年にはプロ野球・日本ハムファイターズと提携し、硬質フェルトに選手のユニホームなど廃棄衣料を混ぜ、新球場に併設したミュージアムのベンチを製作するなど実績豊富だ。
そして、せっかくの挑戦をより多くの人に知ってもらえればと、内丸の発案でCo-Design Challengeに応募。ボードをベンチに製品化し、万博会場でお披露目することになった。現在は、色ごとの繊維からつくるフェルトの密度、成形する際の温度や時間など様々に条件を変え、色合いや硬さをどうするか、試行錯誤を重ねているところだ。
「捨てられるはずだったものが新しい素材に生まれ変わることで、モノづくりの可能性を広げられる。こんなにワクワクすることはない。それに、原料となる廃棄繊維は毎回違うから、二度と同じ柄や色には出会えない。まさに一期一会。だからこそ無限の可能性があり、ひらめきを与えてくれる」。アボード代表取締役、吉田剛は声を弾ませる。
万博は日本のリサイクル技術を世界に発信する好機となる。藤田は「廃棄繊維の次の市場へとつながる新しいビジネスチャンスになっていってくれれば」と期待する。内丸も思いは一緒だ。「コストの問題があり、価格面ではまだ従来品に及ばないが、付加価値を高めることで価格以上の魅力を示し、思わず使いたくなるようなアップサイクル品をどんどん生み出していきたい。その結果、廃棄衣料が減る社会になってくれればうれしい。そういう思いを万博で示したい」
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