丸紅株式会社
2025.02.20
「何度でも生まれ変わる循環型食器」 一人の社員のひらめきが開発につながる Vol.4
万博会場で提供を予定する「edish」の食器(ボウル)とフォーク

2024年夏、簗瀬は新しいごみ処理システムの商談のため、インドネシア・スラバヤ市の広大なごみの埋め立て地にいた。見渡す限りのごみの山には異臭が漂い、生ごみ周辺を飛び回るハエの群れや野犬に交じり、金目の品になりそうなプラスチックごみを漁る人の姿もチラホラ見えた。「ごみの堆肥化、リサイクル技術を導入できれば、この光景を変えることができるのに」。海洋プラスチックごみの流出量が世界ワースト3に入る同国を視察し、簗瀬は改めて、日本だけでなく海外でもごみ処理問題の解決に挑みたいという思いがみなぎった。

解決の糸口として注目するのは、やはり微生物を活用した発酵技術の可能性だ。2024年の夏以降、トンネルコンポストと呼ばれる方式によって、バイオマスの力でごみを処理するシステムの普及に乗り出している。この方式はヨーロッパでは一般的なごみ処理方法で、食べ残しや汚れのついた食品パッケージ、紙おむつなど雑多にまざり合ったごみでも、微生物と一緒に発酵槽に入れれば、きれいに分解され、においなども取り除いてくれる。分解で残ったプラスチックや紙を固形燃料の原料として有効利用することもできる。焼却処理に比べてCO2排出量を抑えられるうえ、焼却灰を埋め立てる最終処分場も不要になる。焼却が当たり前とされてきたごみ処理の常識を一新できる手法として、簗瀬は自治体などにアプローチしようと準備を進めている。

世界はいま、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とせず、資源を効率的に利用しながら付加価値の最大化を図る「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行が加速している。博覧会協会は会期前より勉強会を開き、徹底した循環型の対策を議論し、世界に向けてレガシーを残そうとしている。

edishの開発をしていた時、簗瀬の頭に常によぎった言葉がある。祖母が口癖にしていた「もったいない」という6文字だ。「いまや世界共通語となった精神が改めて万博を通じて多くの人の心に浸透し、行動の変化につながってくれれば」。知らず知らずのうちに、地球環境に負荷をかけないライフスタイルを築き上げていた日本の先人への尊敬の思いとともに、持続可能な循環型社会の構築に向け、簗瀬はビジネスを通じて動き続けようと心に誓っている。

パッケージ事業部 簗瀬 啓太 さん
万博会場で提供を予定する「edish」のフォーク

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