一般社団法人吉野と暮らす会
2025.03.04
「伝えたいのは木の循環のストーリー」 奈良・吉野の後継者たち 次世代に向けて Vol.4
完成した5台の「吉野材のベンチ」とプロジェクトメンバー
(前列左から)富松さん、辻さん(後列左から)石橋さん、丸さん、田中さん、吉川さん

 吉野山に雪が舞った2025年2月初旬。Co-Design Challengeに関わった6人全員が久しぶりに顔をそろえ、最後の工程となるロゴの印字作業が行われた。木の循環を伝える「吉野材のベンチ」。完成した5台の座面は木目や色つやなどすべて表情が異なり、それぞれにふくよかな香気を放っていた。

 「座ってもらえれば、吉野材の軟らかい質感がきっと伝わるはず。世界中の人たちに吉野という地名を覚えてもらうきっかけになってほしい」。田中は側面にしるされた「吉野貯木場」の文字をなぞり、いよいよ開幕する万博に声を弾ませた。デザインを担当した富松も「B to B中心の吉野貯木場からベンチのようなエンドプロダクト(最終製品)を生み出し、吉野を知らない全国、世界の人たちの目に触れ、評価してもらった時、新たな気づきや視点が生まれるかもしれない。どんな感想が寄せられるか今から楽しみ」と期待を寄せる。

 吉野ブランドの再構築に動くメンバーたち。辻は昨夏から本業に加え、担い手不足が深刻な林業にも携わるようになった。「一人加わったぐらいで状況は変えられないかもしれないけど、相談しあえる仲間がいるので、みんなで知恵をだしあって、新しい人が入ってきてくれるような一歩になれたらいい」。石橋は「Co-Design Challengeでは新たな出会い、共創に恵まれ、木の魅力をアピールする様々な着想のヒントをもらえた。会期の半年間、ともに連携して発信をしていけば、それぞれに面白い発展につなげていけそう」と展望を描く。

 その一つが、Co-Design Challenge2023選定企業の「象印マホービン」とのコラボレーションだ。「丸商店」の緻密な彫り込みの加工技術を駆使し、マイボトル洗浄機のサイドパネルを吉野杉で製作している。丸は「吉野材をあわせることで、温かみを加えられると感じた。他企業との取り組みが進むことで、吉野の木や加工技術に興味をもつ人が増え、これまでになかった活用のアイデアを生み出すことができれば」と話す。

 そして、共創はものづくりだけにとどまらない。Co-Design Challenge2024に選定されている友安製作所の松尾泰貴を「よしのウッドフェス」に招き、吉野の未来について意見交換することもできた。

 「木のまち」吉野は今後、どんなストーリーを展開していくのか。「様々な地域とオープンファクトリーで連携し、技術協力やイベントなどでつながりを深め、万博をテコに高まる集客力を相互に波及させていく。そんな未来をつくっていきたい」。吉川は万博での飛躍を誓った。

吉野材のベンチ
「吉野貯木場」のロゴをベンチ側面へ印字する様子

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