旭川家具工業協同組合
2025.03.04
木製家具が育んだデザイン都市。旭川家具の魅力を世界へ発信 Vol.3
万博会場に提供される5脚の椅子

 「家具の聖地」と呼ばれる旭川。デザインを武器に時代を牽引してきた原動力は、30年以上にわたって作り手とデザイナーをつないで新しい風を吹きこんできたIFDAの存在だ。万博に提供する5脚の椅子は、IFDAの入賞作などからカンディハウスが北海道産広葉樹を使って製品化したもの。「デザインとものづくりが融合した世界にも例のないスタイルを見ていただきたい」。藤田は万博への思いを語る。

 旭川在住の下里修平がデザインした2021年の入選作「フラン リビング イージーチェアー」もその一つだ。「美しいポテンシャルのあるデザイン」に注目が集まったが、藤田が「このままでは製品化が難しい。一緒にデザインをやり直そう」と提案して取り組んだ作品だ。当初は頭が出るくらいの小さな背もたれだったが、座る人を包み込むような背もたれにし、座面も体勢を自由に変えられるような広いものに変更することで「自分だけの居場所が作れる」椅子にブラッシュアップ。ユーザーの評価も高くウッドデザイン賞2023では林野庁長官賞に選ばれた。

 「なにこれ、とびっくりさせたい」というのが「KINA LUX(キナ ラックス)」だ。2017年の「IFDA記念制作展」にニュージーランドのデザイナーが出品したもので「KINA」とはマオリ語でウニを意味する。特徴的な網目模様はウニの殻にインスパイアされたと言いアート要素も強いが、大人が3人座れる強度も確保して、オットマン(足乗せソファ)などのスツールとしても使える。複雑な網目の形状のデザインを家具で表現できるのはカンディハウスが得意とする成型合板とCNC加工の技術だ。薄い板を重ねて型を作りプレス加工することで多様な曲面にも対応し、コンピュータ制御の加工機械が複雑な網目を削り出す。デザイナーのチャレンジングな要求を職人たちのこまやかな感性と高い技術力が支えてきた。

 体験企画では、旭川家具工業協同組合が中心となり2025年6月25日(水)から29日(日)まで「Meet up Furniture Asahikawa」を開催する。家具以外の建築、機械金属、食品などの団体も参加する地域のデザインイベント「あさひかわデザインウィーク」の期間中に行われ、20か所の工場を見学できるオープンファクトリーなどを実施。旭川デザインセンターでは木工体験のワークショップもある。藤田は「多くの工場はショールームも併設しており、ものづくりの現場を体感してほしい」と話す。良質な木材に恵まれた北の大地で生まれる卓抜したデザイン。旭川家具は万博を舞台に一層の輝きを増す。

座る人を包み込むような背もたれの「フラン リビング イージーチェアー」
「KINA LUX」の特徴的な網目のデザイン

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