丸紅株式会社
2024.02.29
「何度でも生まれ変わる循環型食器」一人の社員のひらめきが開発につながる Vol.2
丸紅 パッケージ事業部 簗瀬 啓太 さん

2020年8月、葛西臨海公園(東京都江戸川区)から実証実験をスタートさせた。公園内のカフェでedishのボウル容器と平皿、深皿の3種類を使用。専用の回収ボックスを設け、お客さんには食事後、分別に協力してもらった。回収後は持ち込んだ小型の堆肥装置で肥料にし、公園内の花壇づくりに活用した。

普段は購入した商品の流通を担い、企業同士の仲介業務が中心の商社マンである簗瀬にとって、自分で開発した商品を消費者が使用する瞬間を見ることは、人生で初めての体験だった。「何とも言えない満足感と達成感を味わい爽快だった」。さらにスイッチが入った。

それから、サッカーJリーグの試合会場、ホテルの朝食ビュッフェ、バーベキュー場、海の家……。いろいろな場所で実証結果を積み上げていった。J1・川崎フロンターレのスタジアム前の屋台では、塩ちゃんこ1杯をプラスチック容器で500円、edishでは550円で販売したところ、説明を聞いた7割が50円高いedishを選んでくれた。

こうした反応に手ごたえを得る一方で、課題も徐々に浮き彫りになってきた。実験の際、目を離すと一般のゴミ箱に捨てられるケースが多く、分別回収の難しさを痛感した。堆肥装置を備えている施設も少なく、導入の手間とコストが重くのしかかった。

そんな矢先、大阪支社の社員からCo-Design Challengeの応募話がもたらされた。「日本中、世界各国から多くの人が押し寄せるビッグイベントで使ってもらい、認知度を高めることができれば、解決法を探るカギになるかも」。会場内の食事用にボウル型食器10万個を提供し、回収箱はCo-Design Challengeに参加する「日立造船」のグループが製作してくれることになった。

利用者の声を踏まえ、一つひとつ改善も重ねている。原料については食物アレルギーを考慮し、小麦以外にカカオやコーヒー豆の皮、リンゴやミカンなどジュースの搾りかす、茶殻など多様な食品廃材を使用。堆肥化の委託先も、実績豊富な食品リサイクル会社「アイル・クリーンテック」(さいたま市)の協力を取り付け、常時対応してもらえる道筋をつけた。

今後は、安価な使い捨てプラスチック容器に対し、いかにedishの付加価値を実感してもらい、利用の輪を広げられるかが勝負どころとなる。「これからが正念場。海外も視野に販路を開拓し、使い捨てが当たり前という消費者意識を根本から変えていきたい」

芽吹いた夢が大輪の花を咲かせるまで、簗瀬は大切に育み続けるつもりだ。

食品残渣(生ごみ)と一緒に処理されるedish
循環型食器「edish(エディッシュ)」

この記事をシェアする