エースジャパン株式会社
2024.03.07
「アイデアと信念で環境課題に切り込む」京都発ベンチャー 万博から世界へ Vol.2
エースジャパン代表取締役 判藤 慶太さん

「やれるかどうかは未知数かもしれません。全責任は私がとりますから、お知恵をお貸しください」。

三顧の礼に倣い、丁寧な説得にて判藤は深々と頭を下げた。1度目、2度目はこれまでと同じ理由で断られていた。向かい合った熟練工は一線を退いていたが、金型の世界では名の知れた腕の持ち主。その匠の技があれば、苦境を切り開ける。断られるわけにはいかない。判藤の鬼気迫る思いが伝わったのか、そこまで言うのであればと、根負けしたように首を縦に振ってくれた。道が開けた瞬間だった。ここからようやく動き出し、金型は兵庫県南あわじ市の製作所、プレス機は徳島県小松島市の老舗の鉄工所が受け入れてくれることになった。思い立ってから2年半の月日が流れていた。

「Kyo Pallet(京パレット)」と名付けられた製品は、そっと世にデビューする事となった。パレット成型技術は特許も取得。京都府内だけで9700トン以上に上る未利用材を活用するだけでなく、仮に不法投棄されても約18か月程度でほぼ自然分解され、環境への配慮が評価された。大手企業から発注も取り付け、現在に至る。原料調達は、森林組合連合会だけでなく、電力会社とも連携し、水力発電所のダム湖に漂着する流木などにも広げていった。

「環境は壊すのは速いけど、立て直しには時間がかかる」。判藤が周囲に常々言う言葉だ。起業してからずっと抱き続けてきた思いでもある。技術もそうだが、この思いを京都から全国へ、世界に向けて発信できないか。そんな展望を抱いていた時、Co-Design Challengeを知った。多くの来場者がつかうベンチに転用すれば、一般の人たちにも知ってもらえるきっかけになるかもしれない。京都のデザインスタジオであるFortmareiや、技術面では商用車向け用品の研究開発事業者であるダブルクラッチと協力体制を組み、すぐに応募した。

公式キャラクター「ミャクミャク」をモチーフにしたデザインを考えている。また、材料は京都だけでなく、全国の未利用材を使い、各地の現状を撮影した動画を印字する二次元コードで発信予定だ。さらに、もう一つアイデアがある。木材だけでなく、竹の活用も視野に入れている。管理が行き届かない放置竹林も年々増加し、獣害や土砂災害など環境への影響が危惧されているからだ。自治体の職員らから悩みを聞くうち、横展開を思いついた。

「今回ほど環境問題がクローズアップされている万博はない。人と人とのつながりを大切に、より多くの力を結集して環境を守りつつ、ビジネスとしても持続性のある取り組みにしていきたい」。判藤の挑戦は続く。

粉砕したチップとそれを圧縮し固めたもの
ベンチの強度について検証し、改善を重ねていく

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