使い捨ての文化を見直し、循環型経済にシフトした生活様式を定着させようと、産官学の垣根を越えたプロジェクトに挑み続ける「テラサイクルジャパン」が、大阪・関西万博で「これからのごみ箱(資源回収箱)」をデザインする。開幕前から消費者を巻き込み、世界に発信するプラスチックごみの資源循環モデルとは。ごみそのものの概念を覆す取り組みに迫る。
「大阪・関西万博で生まれ変わる!」「空容器を集めて再生に参加しよう!」。呼びかけのメッセージが書かれた回収箱が、2023年10月から流通大手「イオン」グループのスーパーに設けられ、全国650店舗に広がる予定。洗剤や柔軟剤、ヘアケア製品など使用済みのプラスチック容器を買い物客らから集め、万博会場に設置する資源回収箱の原料にする。リサイクル材からリサイクルのためのツールを作り出す取り組みだ。テラサイクルジャパンとイオン、日用品メーカー「P&Gジャパン」がタッグを組んで企画した。
「普段は捨てている使用済みプラスチック空き容器を店舗に持ち込むことで、誰もが万博に参加できる。みんなで力をあわせれば、ごみを資源に変え、循環型社会の実現につなげられることを、万博を通じて日本から世界に示したい」。テラサイクルジャパン代表、エリック・カワバタの思いは熱い。
「捨てるという概念を捨てよう」。これが、テラサイクルのミッションだ。再生困難な廃棄物のリサイクル活動などで世界の廃棄物問題に向き合ってきた。アメリカを本社とし、日本のほかカナダやイギリス、中国、韓国などに拠点を構える。
カリフォルニア州出身のカワバタは、ワシントン大学大学院で法学修士課程を修了し、海外の大手投資銀行の役員などを経て、環境専門のコンサルタントとして活躍していた。転機は13年、テラサイクルの創業者トム・ザッキーとの出会いだった。「素晴らしい話だけど、日本には必要ないと思いますよ」。日本での展開について相談を受け、カワバタは率直に答えた。環境省のデータやニュースを見る限り、日本はごみの分別回収が進み、リサイクル率が高く、ポイ捨ても少ない。ごみ問題はないと思っていたからだ。
だが、調べてみると実態は違った。回収したプラスチックの大半は燃やす際の熱を発電などに利用する「サーマルリサイクル(熱回収)」されていたのだ。これは脱炭素化の流れとは逆行する。そこで、ふと疑問がわいた。どれほどの国民が回収後の廃棄物の行方を知っているのだろうか。島国ゆえに限られた資源を大切にし、もったいない精神を育んできた国民性だけに、問題意識さえ芽生えれば、廃棄物を原料や製品として再資源化する「マテリアルリサイクル」が、どの国よりも進むのではないか。
現状を知るうち、決意がみなぎった。翌14年1月、日本法人の代表に就いた。日本でも使い捨て文化をなくす挑戦の第一歩を踏み出した。
(Vol.2に続く)
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