まずは、プラスチックなどの資源を回収し、再生させるプラットフォームづくりに着手した。物流や加工など一連の請負業者を探すなか、マテリアルリサイクルを手掛ける業者が日本は少なく、ひときわ苦労した。商談にこぎつけると、信用を得るために何度も足を運んで対話を重ねた。並行し、行政や企業に出向き、理念やビジネスプランを説明してまわった。たばこ販売会社や化粧品メーカーなどと連携し、回収リサイクルプログラムを始めた。吸い殻のフィルターを灰皿やクリアファイルに、化粧品の空き容器をスパチュラ(へら)に再生させ、来店客に配布するなどの取り組みを実施し発信していった。
だが、消費者への広がりは緩やかだった。回収量が増えないとリサイクルのコストもかかる。「家でちゃんと分別しているから、責任は果たしている。日本の消費者の多くはこう思い、なかなかプログラム参加の必要性を感じてくれない。回収だけを呼び掛けてもだめだ」。カワバタは考えた。そこで、日用品メーカー「ライオン」とともに、学校の総合学習の授業の一環として使用済み歯ブラシを回収し、植木鉢に再生するプログラムに乗り出した。「捨てずにリサイクルすれば、地球をきれいにできると知って驚いた」などの声が児童・生徒から寄せられ、手ごたえを感じた。
潮目が変わったのは2018年、中国が資源ごみの輸入禁止に踏み切ってからだ。輸出量が上位だった日本は対応に追われ、テラサイクルの活動がメディアでも取り上げられるようになった。パートナー企業やブランドが増え、詰め替えパックやおくすりシート、紙おむつ、ペンなど様々な廃棄物を「ごみにしない」プログラムを矢継ぎ早に実現していった。
2021年には、同じく「P&Gジャパン」と「イオン」と協働で、イオングループ各社の店頭においてP&G製品の使用済みプラスチック製空き容器を回収し、フェイスシールドの素材としてリサイクルするなど、少しでも多くの方々に循環型社会の実現に自分も貢献できるということを感じていただくべく、様々な市民参加型の協働プロジェクトを実施してきた。こうした積み重ねが、Co-Design Challengeへとつながった。「どれだけの人が参加してくれるか未知数だが、日に日に反響は広がっており、きっと大きなうねりになると信じている」。カワバタは期待する。閉幕後は回収箱を地域に戻し、分別回収した使用済み容器などをまた、新たに再生利用するために活用していきたい。
今年で日本法人の事業開始から10年の節目を迎える。ごみとされてきたものに新たな可能性を見いだす活動は全国に広がり、行政との連携も飛躍的に進んだ。「経済効率の問題があるから、リサイクルやリユースの取り組みは一挙には進まない。でも、日本人はコミュニティーを重視し、みんなで頑張るという強みをもっている。いろいろなステークホルダーを巻き込めば、なんでもできるということを示したい。日本の挑戦は他の国々にとっても良いモデルになるはず」。カワバタは日本の底力を確信している。
この記事をシェアする