日立造船株式会社
2024.03.08
「資源循環で新しい道を切り拓く」 スマート回収箱とアプリで分別意識促す Vol.1
アプリの仕様について話し合う

スマートフォンアプリを通じて、来場者に資源循環の大切さを考えてもらうスマート回収箱が、大阪・関西万博の会場に設けられる。手掛けるのは、ごみ焼却発電施設の建設を主力とする「日立造船」だ。捨てた後のごみの行方を可視化することで、正しく分別すれば、資源として何度でも活用できるというメッセージを伝える。

日立造船ほど、社名と会社の実態が乖離(かいり)した企業はない。日立製作所との資本関係は戦後まもなく解消。2002年以降は祖業の造船業を分離した。いまは、ごみ焼却発電施設の建設など環境事業がメインになる。焼却時に出る熱を利用し、電気などのエネルギーに変換する「ごみ焼却発電」の国内シェアは平均して20%ほどとトップグループの一角を担う。

小倉舞が入社したのは、環境事業の売上高が会社全体の半数近くに伸びていたころだった。当時の社内は「環境イコール、ごみ処理」だったという。だが、ごみ焼却発電施設の建設需要は、人口減少で右肩上がりとはいかない。

小倉は入社後、次の主力事業を創造する開発部門に配属された。ごみ焼却に代わる事業を考えようと、チームで協力して様々な取り組みに挑戦した。豚や鶏の糞を炭に変え、肥料原料として植物を育てるなど畜産廃棄物を活用する試みに力を注ぐうち、ごみを資源として捉え、循環させていく考え方に可能性を感じるようになった。

同社は18年、「SDGs(持続可能な開発目標)推進方針」を策定し、総力をあげてSDGsに取り組む姿勢を表明した。折しも、小倉はその年、現在の環境技術推進部に異動した。同業他社や大学の専門家らでつくる委員会に参加し、カーボンニュートラルやAI(人工知能)などをテーマにごみ処理をはじめとする廃棄物処理・環境衛生の今後について話し合う機会に恵まれた。「これからは焼却だけじゃなく、捨てる前にリサイクルさせる。電気などエネルギーだけじゃなく、ほかのものにも生まれ変わらせたい」。さらに思いは募った。

その間、国の政策も大きく動いた。G20大阪サミットを機に、「Reduce(削減)」「Reuse(再利用)」「Recycle(再循環)」の3RにRenewable(再生)を加えた「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された。プラスチックをはじめとするごみの資源循環は一企業だけで完結できる問題ではない。

小倉は考えた。「企業、自治体はもちろん、一人ひとりの意識が変わってこそ、大きく進んでいくもの。環境事業を手掛けている日立造船だからこそ、まずは第一歩となる正しいごみの分別について発信していくことに意味があるんじゃないか」。そんな時、Co-Design Challengeの募集を知った。企業間取引が主体のBtoB企業だけに、消費者とつながれる千載一遇のチャンスと感じた。
Vol.2に続く

環境事業本部 小倉 舞さん
スマート回収箱のデザインや仕様について打ち合わせる

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