象印マホービン株式会社
2024.03.12
「マイボトルがつくるサステナブルな未来」魔法瓶メーカー 次の100年を描く Vol.2
新事業開発室長 岩本 雄平さん

最初に手本として思いついたのは、ボトルホルダーがついた家庭用の食器洗い乾燥機だ。しかし、洗浄に1時間程度かかり、外出時に使うという想定をすると、所要時間が長すぎる。手軽に利用してもらうため、20秒程度に短縮しようと目標を定めた。

スピード洗浄を実現するため、技術協力してくれるメーカーを探し回った。企業の展示会などに足を運び、ようやく出会えたのが大阪府東大阪市の「中農製作所」だった。マイボトル洗浄機にかける思いを伝え、同社の部品洗浄機の技術を転用させてもらうことにした。だが、ネックになったのが、部品洗浄機の駆動源が高圧エアーだったことだ。商品化した際、需要が見込めるのは企業のオフィスや街中のカフェになる。そのような場所にエアーコンプレッサーを導入することは難しく、電気駆動にするために一から仕様や部品を検討しなおした。

ほかにも、試行錯誤は続いた。最初はボトル全体を洗う想定で進めていたが、乾燥に必要な時間や電力がかかるため、洗浄個所を飲み口とボトル内部に限定することで使い勝手とスピード・省エネを両立させた。また、海の環境や生き物への影響を考え、合成洗剤はつかわず、オゾン水で除菌することに。誤作動で周囲が水浸しにならないよう、ボトルに反応するセンサーも取り付けた。

構想がもちあがってから約4年。基本仕様が固まりつつある中、製品化に向けてより開発スピードを加速させるため、設計開発から試作・量産までを幅広くサポートできる大阪府門真市の「STUFF」にも参画してもらった頃に、Co-Design Challengeの募集を知った。

「大阪の会社なので、万博の誘致が決まった時から、何らかの形で貢献したいと思ってきた。Co-Design Challengeはソリューションブランドとして協力する絶好のチャンスと感じた」。岩本は力を込める。

ソリューションブランドとは、企業が社会課題の解決を目指すことで、その価値を高める取り組みだ。世界の大きな潮流でもある。象印は、自社のソリューションブランドの方向性を示すツールの一つとしてマイボトル洗浄機を選んだ。

外出先でマイボトルを楽しむには、中身の飲料サービスの拡充も欠かせない。象印はすでに、カフェや日本茶専門店と提携し、店頭でコーヒーや紅茶、日本茶などをマイボトルに提供してもらえる取り組みを全国展開している。万博会場ではウォーターサーバーの横に洗浄機の設置を予定するほか、飲食ブースとの連携も目指している。

岩本は思い描く。「Co-Design Challengeは僕たちのチャレンジだが、来場者の皆さんにとっても、新しい取り組みにチャレンジする場であってほしい。体験することで使い捨てプラスチックがなくても不自由なく過ごせる未来を感じてほしい」

設計図とマホービンイメージ
新事業開発室 古谷 啓人さんと新事業開発室長 岩本 雄平さん

この記事をシェアする