エースジャパン株式会社
2024.11.07
「アイデアと信念で環境課題に切り込む」京都発ベンチャー 万博から世界へ Vol.3
ベンチの原料である未利用間伐材を粉砕したチップ

「壁を越えた先を見てみたい」。Co-Design Challengeで未利用材を使った2000脚(4000席)ものベンチを万博会場に提供するという判藤の思いは、多くの人の共感を呼び、プロジェクトは一気に加速し始めた。

原料調達には京都府内にある全20の森林組合が、協力を申し出てくれた。「新たな環境への貢献を京都から一緒に発信したい」。力強いサポートが加わった。学校現場からも反応があった。校内樹木を整備した後に出る枝や葉の処理は悩みの種だったというが、「万博に使われるのなら」という生徒たちの声もあり、学校に出向いて、子どもたちと一緒に作業しながらの回収も始まった。

けいはんな学研都市のエースジャパン本社工場前には、こうして各地から集められた未利用材の袋がずらりと並ぶ。袋ごとに伐採地や日付、画像などの情報が付けられている。ベンチになった時に、どの地域の材で作られたものか、情報発信するためだ。

未利用材は、粉砕機でチップ化した後、独自に開発した金型を使い、プレス機で30cmの厚みをわずか3cmにまで圧縮し、ベンチのパーツとなる1枚の長方形の木板を作る。これをくり抜き、組み立てると、耐水、耐光、耐熱、耐加重、いずれにも秀でたベンチが完成する。組み立てもはめ込み型で、釘一本使わず簡便にできるため、校内樹木を回収した中学校の子どもたちにも体験してもらう予定だ。

本社オフィスの入り口には、二つの楕円(だえん)の台座を組み合わせた、万博会場へ提供するベンチが置かれている。木の風合いが優しげで、思わず近寄って座りたくなる。公式キャラクター「ミャクミャク」をモチーフにしたユニークな造形は、協力企業の京都のデザインスタジオ、Fortmareiに依頼し、一発OKを出した自信作だ。

判藤は学生時代、陸上100mのスプリンターだった。10秒04の記録を持ち、全国大会優勝の経験もある。「突破」と書いた鉢巻きを締め、壁に挑んできた少年は、けいはんな学研都市のラボ棟から起業し、好奇心と探求心でここまでたどり着いた。

10月からは、ベンチの組み立て作業も本格化する。企業や自治体との横の連携を重視しながら、自由な発想をカタチにしてきた。「万博はスタート。企業としてもまだまだ成長したいですから」。わくわくしながら、開幕の号砲を待つ。

エースジャパン代表取締役 判藤 慶太 さん
万博会場に提供する、これからの「未利用間伐材を活用したベンチ」

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