「想(おも)うベンチ―いのちの循環―」は、ベンチ制作、ワークショップ、特設サイトによる情報発信の三つのプロジェクトから成るCo-Design Challengeだ。
ベンチ制作では3人のデザイナーが原案を作り、企画を進めている。コンセプトは「樹のためのデザイン」。単に材料としての”木材”ではなく、いのちある”樹”として捉えると、使い方、人との関係はどう変わるのか。そんな視点で検討を進めている。言うは易いが、実現させるのは至難の業だ。サステナビリティ推進部の島本礼子は「どのデザインも新たなチャレンジという感じなので、形にするためにクリアすべき課題はまだまだ山積み。ただ、普段は各工程の分業で直接話す機会の少ないデザイナー、製材所、メーカーの人たちも直接議論しながら一体となって進めてくださっているので、万博だからこそ実現した面白いチャレンジになっている」と目を輝かせる。
大阪産の杉の木を磨いてスプーンに仕上げるワークショップも、「森と人のつながりを感じる試み」と同部の中嶋美和子が話を続ける。夏休みに百貨店で開催したイベントには親子連れが多数参加した。「熱中したお父さんが、眠ってしまった子供さんを抱きかかえながら、仕上げに没頭する姿もあった」とほほ笑む。ワークショップに先立ち講師が「大阪府は府域の3分の1が森林で、都市は森に囲まれている」と解説すると参加者は意外な森の広さに驚いていた。さらに、「山を守るために、木を切ることも大切なこと」と学んだという。人が山に入って適切に手入れしていくことこそ、森を守ることにつながるのだ。杉の木のスプーンは森と人をつなぐ架け橋になる。ワークショップは今後、府内のイズミヤショッピングセンターなどで展開し、「木への親しみの輪」を広げていく。
想うベンチ特設サイトは、既に公開中だ(https://omoubench.jp/)。現在のページはプロのライターが執筆しているが、今後は6月に一般公募で集まった25人に書いてもらう。当初20人枠で募集したが、「皆さんの熱量が予想以上で、応募頂いた方全員に参加頂くことにした」と島本。テーマは「伝統野菜」「水」「音楽」など多岐にわたる。プロジェクト名の「いのちの循環」に少しでもかかわっていれば何を書いてもいい、と間口を広げた。高校生や大学生から社会人、シニア世代の人までで、様々な性別、年代、職業の人が取り組む。毎月1回のオンライン編集会議でプロの編集者にアドバイスも受けながら各々が記事の企画から担当し、年内の記事公開を目指している。
世代を超えて人々が交流し、森やまち、人、様々な「いのち」に思いを馳(は)せるプロジェクトは進む。
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