徳島県南部に位置し、9割以上を森林が占める那賀(なか)町。人口7,000人余りと、5町村合併後も過疎化・高齢化が進むこの町から万博に送り出すのは、未利用の県産木竹材を活用した「森林・地域を元気にするごみ箱」だ。木々を粉砕した「木粉(もくふん)」を樹脂加工したもので、様々な商品への応用が見込まれ大きな可能性を秘める。「林業はカッコいいぞ」。「清流と森のナカ」から熱いメッセージを発信する。
木粉を製造するのは創業10年を迎えた「那賀ウッド」だ。副社長の庄野洋平は隣接する阿南市のタケノコ農家に生まれ、竹林を遊び場に育った。かつては全国1位のタケノコの生産量を誇り、多くを水煮に加工していた阿南市だが、中国から格安の品が入るにつれて生産量は減少し、後継者不足もあり放置竹林が増えていくようになった。手入れが行き届き、日の光が土壌にまで差し込んでいた美しい竹林。間伐を怠り、荒れ放題になると、竹が密集し下草も生えなくなる。そうなると根が浅い竹は大雨などで流れやすく、土砂崩れなどの災害の原因になる。そんな状況を目の当たりにしてきた庄野にとって、循環型社会実現のために木や竹の活用を目指すのは自然な流れだった。
「森林・地域を元気にするごみ箱」は、那賀ウッドとパートナーを組んできた「パナソニック プロダクションエンジニアリング」が製造を担当するなど計4社が参画し、食品包装資材専門商社の「折兼」が代表企業として取りまとめることで、Co-Design Challengeへの応募に道が開けた。
眼下に清流が流れ、周囲を豊かな自然が取り囲む広々とした土地に那賀ウッドの工場がある。原木の丸太が積まれ、工場横には機械で割られた薪(まき)や製材端材が乾燥のために無造作に置かれている。工場内に運ばれた木片は、手作業でコンベヤーに投入され、粉砕ラインを通っていく。いくつかの工程を経て機械から吐き出されてくるのは、木の香りを残したさらさらの木粉だ。ノコギリで切った後にでる「おが粉」よりさらに細かく、「きな粉」のようだとも例えられる。
那賀ウッドの独自のノウハウで加工される木粉。出所のしっかりした徳島県産の未利用木材を使い、前処理、粉砕加工、保管管理を徹底して行うことで、ばらつきのない安定した品質を生む。解体材は一切使っていないため粘着剤や防腐剤などの不純物の混入もない。「地域の木を少しも無駄にすることなく使い尽くす」。庄野のこだわりが、徳島の林業に希望の道を開く。
(Vol.2に続く)
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