「いい“いなか”」を掲げる那賀町。林業の持続的発展のためには6次産業化への取り組みが欠かせない。庄野は「木粉」に活路を見いだす。まず機能性に優れている。吸水、消臭、断熱など自然木の良さがそのまま生きている。さらに混ぜたり成分を抽出したりすることで、様々な商品への活用が可能だ。すでに食器やウッドレザーとして商品化もされている。
万博へ6個提供する予定のごみ箱は、県産の竹や杉で作った木粉を樹脂と合わせて成形する。木粉の原材料となる竹や杉の未利用木材は、活用が進まずに廃棄されることもある。廃棄されるものを収集するごみ箱を地域の未利用木材から作ることで、ごみや資源の有効活用を考えるきっかけになればという思いが込められている。試作品は、幅24cm高さ28cmで一見樹脂製にしか見えないが、徳島の木の良さをたっぷりと練り込む。木粉の配合量を少しでも多くできないかと最終調整に入る。また配色や杉のイラストなど、デザイン面でも存在をアピールできないかと議論を重ねている。
木粉工場見学などの体験企画を予定しているが、人気を呼びそうなのが、自然を遊び尽くす「森林まるごと体験ツアー」だ。「エイト日本技術開発」が中心となってプランを練る。ここでしか楽しめないのが杉製のパドルボードを使ったSUP体験だ。波の少ない川口ダム調整池でパドルを漕(こ)いで進む。杉製ボードは、地元で手作りしたもので、長さ3mと4mの2本を用意した。美しい木目で優しい手触りだが、重量感も半端ではない。3mで40㎏、4mで80㎏。ただし水に浮かべてしまえば木の浮力もあり重さを感じることなく、安定感のある乗り心地が楽しめる。「木を使ったボードを作ることで、山と川、さらに海のつながりも伝えたかった」と庄野は話す。SUPを楽しんだ後は、そばにある「もみじ川温泉」で疲れた体を癒やすこともできる。
子どもたちは、町の木をふんだんに使った「木育」発信の場「那賀町山のおもちゃ美術館」でたっぷり遊べる。「けんだまひろば」や「すみやきごや」など、ここでしか体験できないおもちゃが用意され、多世代でも十分に楽しめる。ほかにも環境省の自然共生サイトに選定された山林でのトレッキングや、春にはタケノコ狩りと、四季それぞれの自然を味わってもらえる楽しさ満載のツアーになる。大手旅行会社からも「こんな魅力があるなんて知らなかった」と声が上がったほどで、庄野は発信されないままになっている地元の良さを改めて認識した。
万博への参加は町民にとっても大きな自信になるはずだ。何より若者に林業の魅力に目を向けてもらいたい。「木と生きる町」として地域が守ってきた価値ある資源に世界が目を向けてくれるきっかけにつなげたい。万博は大きな飛躍の舞台となる。
この記事をシェアする