高木包装は1955年創業で70年の歴史を持つ。髙木はCo-Design Challengeへの参加を「未来の商品開発に向けたステップ」と位置づけている。2025年6月に予定する体験企画の舞台となる本社工場を、同社では「TSJ(タカギ スタジオ ジャパン)」と呼ぶ。大阪・関西万博会場に近い人気テーマパークにあやかり、「ものづくりの工場を、エンターテインメントの場として捉えてほしい」という思いが込められている。基本を大切によりよい品質を求めるが、遊び心を忘れない。それがこれからの日本のものづくりに必要、との信念からだ。Co-Design Challenge参加以前からオープンファクトリーとして地域に開放し、社員や取引先の家族、近隣の人たち向けの縁日「サンクス祭り」では、社員が運営する屋台などを目当てに毎回200人ほどが訪れている。
SDGs(持続可能な開発目標)の理念に沿う体験企画では、工場見学のほか、開発した展示台の組み立て体験、段ボールの端材を詰め合わせた工作キット「SDKids(エスディーキッズ)」で遊ぶワークショップなどを計画している。
工作キットは、髙木の知人家族が工場見学に来た3年前の夏、偶然生まれた。小学3年生の子が、社員の説明を聞く大人たちの横で、床に落ちている段ボール片を集めているのだ。「『何をしているの?』と聞くと、『友だちに持って帰る』ってうれしそうに言うんです」。髙木は思った。「私たち大人には不要でも、子どもには宝物なんだ」と。端材を集めてキットにすると人気になった。
もうひとつの目玉が、段ボールの紙相撲だ。「日本書紀」によると、相撲は高木包装本社のある奈良県葛城市周辺が発祥の地である。この故事をもとに、巨大な「段DAN相撲」をつくった。高さ約1メートルの段ボール力士2体を向き合わせ、直径約1.1メートルの八角形の土俵を両手でトントン叩いて勝負する。パリ五輪直前の2024年7月、現地での「JAPAN EXPO Paris2024」に出展すると、パリっ子たちが熱中した。
「これからも歴史を未来に、そして地域と世界をつなげていきたい。そしてCo-Design Challengeでの展示台や体験企画を通じて、段ボールの新しい価値を夢と愛をもって皆さんと一緒に創っていきたい」。髙木は、衝撃から守る、まとめて保管・輸送できるなど多くの機能を持つ段ボールのその先の可能性を見つめている。
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