日本のものづくりを支える町工場が集積する大阪府八尾市。職人たちの確かな技術ととがったアート作品を掛け合わせれば、出会わなかったものが巡り合い、新たな価値が創造できるのではないか。八尾に本社を構える友安製作所が、Co-Design Challengeで仕掛けるのが「端材と廃材を活用した中庭スツールとテーブル」だ。体験企画では、工場見学を取り入れて「非日常の体験」もエンターテインメントとして楽しんでもらう。テーマは「LIVE!SM(ライブイズム) 生きるが、醸す」。ものづくりの現場を舞台にした取り組みが幕を開ける。
プロジェクトを統括するのは、友安製作所執行役員の松尾泰貴だ。同社は、ネジや金属製カーテンフックなどを製造していたが、2000年代に海外製品の流入で需要が激減。一時は、販売に特化した時期もあったが、危機を乗り越えると、原点に立ち返り、鉄、木材の加工技術を使ったオリジナルのインテリアなどを製造販売している。
そんな会社で働く松尾が、なぜまちづくりに取り組むのか。大学卒業後、八尾市役所に入庁した松尾は産業政策課などで勤務し、2020年に町工場の公開を中心としたイベント「FactorISM(ファクトリズム)」を発足した。21年に縁があって同社に入社したが、その後も活動にかかわり、現在は八尾市だけでなく、門真市、堺市などの91社が参加、見学者も2万人を超える企画に成長した。
町工場の現場を知る松尾が気になっていたのが、製造過程で出る端材や廃材だ。リサイクルが進んでいるとはいえ、捨てざるを得ないものも大量に出る。一方、イベントで知り合ったアーティストたちは作品の素材に使う端材をわざわざ買っているという。「もったいない。なんとか両者を結び付けられないか」。アーティストを対象に「端材を見に行くツアー」を企画してみると、これが好評だった。
「端材を活用し、職人の技術とアーティストのデザイン力を組み合わせれば、無価値なものから価値が生まれるのではないか」。松尾は、町工場の底力を広くアピールできる絶好の場所として、世界から多くの来場者が集まる万博を選んだ。「仕事には夢を まちづくりには愛を」。行政マン時代から貫いてきた志だ。人と人を結び付け、新しい企画のプロデュースが得意な松尾。「不安はあるが、誰もやったことがないことに挑戦したい」。驚かせることが好きな松尾のワクワクが止まらない。
(Vol.2に続く)
この記事をシェアする