アポロ11号が持ち帰った〝 月の石〟は、1970年の大阪万博アメリカ館で展示され、大きな話題を呼んだ。2025年の大阪・関西万博では、日本の南極観測隊が採取した〝 火星の石〟の展示が発表されているが、Co-Design Challengeに採択された「宇宙ロケットアップサイクルプロジェクト『&SPACE PROJECT』」により、ロケット廃材のタンクを使用した「宇宙タンクベンチ」も会場に提供される。宇宙関連産業の集積が進む北海道東部エリア、道東を舞台にプロジェクトは進む。
北海道大樹町は1985年より「宇宙のまちづくり」を掲げている。2008年には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携協力協定を締結。宇宙産業を誘致し、ロケット発射場では数多くのロケット打ち上げなどの航空宇宙実験が行われ、2021年春には商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」が本格稼働するなど、酪農が基幹産業の約5,300人が住む小さな町の取り組みは注目を集めている。
大樹町から車で約2時間30分ほどに位置する釧路市内で、カフェを併設したインテリアショップ「BASE9」を営む「11株式会社」代表の十枝内(としない)一徳が「宇宙タンクベンチ」製作の中心人物だ。大樹町の宇宙産業関連企業とつながりがあり、建築などの空間デザインを行う会社「ADDReC(アドレック)」(本社・東京)から、約4年前に「ロケット廃材」を使ったプロジェクトの相談があった。大樹町で進む宇宙産業は、インテリアを本業とする十枝内にとっては、近くて遠い存在であったが、「ロケット廃材の活用ということを聞き、ロケット開発といった、多くの人が思い浮かべるような宇宙産業に関するテクノロジーは持ち合わせていないが、得意分野を生かして何か発信していけるのではないか、ユニークなプロジェクトにできれば面白い」と連携を決めた。
十枝内を起点に、プロジェクトの輪は広がっていく。道内のものづくり企業と道内外のクリエイターを抱える企業など9社が集い、ロケット廃材をアップサイクルし、宇宙をもっと身近に感じられるプロダクト開発を行う「&SPACE PROJECT」がスタートする。「みんな単純に『面白い』というのが参画した一番の理由だと思います。今後さらに協力企業も増えていくと考え、プロジェクト名も『&SPACE』にしました」。十枝内が専門とするベンチ、椅子、テーブル、棚などの「宇宙家具づくり」を進める中、プロジェクトメンバーからCo-Design Challengeへの参加の声があがった。
(Vol.2に続く)
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