2024年10月1日、日立造船は、「カナデビア(Kanadevia)」に社名変更した。目指すのは、「人類と自然が調和する社会」だ。小倉は「カナデビアの名前からは、何をやっている会社かまだ想像できないかもしれない。だからこそ、色々なことにチャレンジできる可能性が膨らむのではないか」と力を込める。2025年1月には、本社最寄りの大阪メトロ「コスモスクエア駅」から3.2km延伸した先に、万博会場の新駅「夢洲(ゆめしま)駅」も開業する。機運は盛り上がってきた。
小倉たちが万博で描く「持続可能な循環社会」は、こうだ。万博会場のフードトラックエリアに、スマート回収箱最大4台を配置。Webアプリで資源循環に関する取り組みを来場者が楽しく学びながら、自然に分解されやすい「生分解性プラスチック」を使った食器類などを分別回収するような行動変容を促す。Webアプリでは来場者に「資源循環したくなる」仕組みを提示する。
入り口となるスマート回収箱を担当するのは、廃棄物処理を手掛ける「大栄環境」と「大栄環境総研」だ。「静脈産業」とも呼ばれ注目の集まるごみ処理の現場だが、人手不足や清掃員の高齢化など課題は尽きない。今回のスマート回収箱にはセンサーが取り付けられ、ごみの量を感知し満杯になれば、フードトラック事業者に連絡が届く。こうして効率のいい回収作業が可能になれば、現場の人手不足解消にもつながっていく。
実証実験も済ませて最終段階に入った回収箱に大栄環境総研の壺内良太は将来への期待を託す。「きちんと分別できれば、ごみも資源となり、後工程での時間短縮にもつながる。データを基にごみ箱の最適配置だけでなくごみ箱自体の数を減らすことも可能となる。まずはきっかけ作り。万博での経験がもたらすものは大きい」。
Webアプリのコンテンツ開発に知恵を絞る小倉は、訴求力を考えてターゲットを小学生以下とその親に絞った。回収した資源が増えるにしたがってパズルのピースが埋まっていき、満杯になればデザインが完成するのはどうだろう。クイズやパズルに挑戦してもらい、達成できれば特典が得られたり、数か月ごとにイラストを替えてストーリーを追ったりできれば、楽しみながら学んでもらえるのではないか。1月には部分公開したいと追い込みにかかる。
Co-Design Challengeがなければ実現しなかったかもしれない2社の〝共創〟。一歩先の未来へと確かな歩みを刻みつつある。
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