イオングループ店舗で回収した使用済み日用品のプラスチック製本体ボトルおよびつめかえパウチを回収リサイクルして作る「ごみ箱(資源回収箱)」は、万博会場内4か所に設置される予定だ。カワバタは「当初、原材料となるプラスチック製容器の回収が進まず、心配しましたが、みなさんのSNSによる発信などが功を奏して、回収量がどんどん伸びてきました」とほっとした表情だ。
一口にプラスチック容器といっても樹脂の成分は様々で、分別回収しても、もう一度プラスチック製品に戻すのは、コストがかかる。「多くが『燃えるごみ』になるか、発電用の熱源となる『熱回収』に回されます。でも、例えば、使われなくなった木のテーブルを壊してバーベキューの燃料に使うとしたら、これはリサイクルといえますか」。カワバタの問題意識はそこにある。「私たちは、回収した容器を粉砕して、洗浄して、圧縮してCo-Design Challengeで万博会場へ提供する「ごみ箱(資源回収箱)」を作ります。現在使用する板材の本製作に入っています。板材には小さなフレークを残し、いろいろな素材が使われていることを可視化しています」。板材は水色やピンクのパステル色の紙吹雪が舞っているような出来栄えだ。「ちょっときれいでしょ?」とカワバタはほほ笑む。
板材を使って作られるごみ箱は、ペットボトルや缶、プラスチック、紙などのごみを分別するステーションになる予定だ。表面には、回収した樹脂製品がごみ箱となり、ステーションとして設置されるまでの「ストーリー」をイラストにして示す。分別回収が進んだ日本では、回収されたごみがリサイクルされているように多くの人が信じているが、実際には、大量のプラスチックは海外に輸出され、見えないところで熱源として消費されたり、海に流出してしまったりしている。「そうした現実をこのプロジェクトをきっかけとして、多くの人に知ってもらいたいのです」。
カワバタは「海外の友人が日本に来て、イチゴの一つ一つをラッピングしていたのに驚いていました。贈答品や、食品の過剰な包装が日本のごみを増やしているのでしょう」と語る。テクノロジーでリサイクルを進めることも必要だが、根本的には、その包装は必要なのか。これまで求めてきた「便利さ」「快適さ」が実は地球の未来のコストになっていることに気づかねばならない時代になった。樹脂を使うのが悪いことではない。どうしたら資源循環できるか考えることが必要なのだ。「人々はそれに気づき始めました。未来は決して暗くないと思いますよ」。カワバタがプロジェクトに込めるメッセージだ。
※テラサイクルジャパン合同会社は2024年12月1日に代表が交代されました。記事内では取材時の情報を表記しています。(エリック・カワバタ氏は同社の現理事)
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