株式会社W TOKYO
2025.01.07
「TGCの発信力で地方の技術を世界へ」 水問題解決の突破口 バイオトイレ Vol.3
「サーキュラーバイオトイレ」のデザイン案(外観)

 万博に向けて、会場で実際に使うシステムの技術的な試作ユニットは完成。排泄物を分解して農作物の栽培に使う水を供給できることは確認済みだ。「外観は、四角い建物が二つ並んでいるだけなので、これから万博会場にふさわしいデザインに洗練させていきます」と田嶋は言う。「トイレの排泄物を微生物で分解、浄化し、不純物がほとんど含まれない水を回収するシステムです。途中、蒸発する水分もあるので、若干の補給は必要になりますが、駆動のためのエネルギーもごくわずかで、ほとんど自立して運用できます」。万博会場では、車台に載せた移動式のシステムを団体バス乗降場に、ユニバーサルトイレとして設置する予定だ。

 淺川は「このシステムは分解の過程で臭いはでませんし、汚泥も残らないのです。そこが現行の仮設トイレとは異なります。ただ、それを入場者に見てわかってもらうようなデザインにするのは難しいですね」と、システムを最大限アピールするために工夫を凝らしているという。この技術は、農業分野での活用は実証済みで、回収した水が、農産物の生育を促進するという実績が確認されている。現在、このシステムで得た水で食物を栽培するプロジェクトが進行中だ。

 それを踏まえて「万博でも、実際に植物を周りに植えて、開幕の春から、期間中の夏、秋にかけて生育していく様子を皆さんと共に楽しみながら観察することはできないか考えています」と淺川は夢を語る。まだアイデア段階で実現できるか模索中というが、会場で、そんな草花や、野菜に会えるかもしれない。

 日本では、上下水道が完備されているし、衛生状態もいいので、このシステムが日常的に必要となる場面は少ないかもしれない。それでも、災害時のトイレ対策などには活用できる。「海外には水に困っている地域がたくさんあります」と田嶋。「清潔な水があれば助けられる命があります。日本発のこの技術を世界で活用したいですね。それが、Co-Design Challengeで万博にサーキュラーバイオトイレを提供する大きな意味じゃないか。私たちはそう考えています」

 「安全な水とトイレを世界中に」。SDGs6番目のゴールをそのまま体現したようなシステムであることは間違いない。

打ち合わせの様子
「サーキュラーバイオトイレ」のデザイン案(内観)

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