旭川家具工業協同組合
2025.01.07
木製家具が育んだデザイン都市。旭川家具の魅力を世界へ発信 Vol.1
旭川家具工業協同組合理事長藤田哲也さん

 日本の森林率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で3番目であり、世界有数の森林大国である。なかでも北海道は、日本の森林面積の22%を占める。その豊かな森林を生かした木工家具のまち旭川は、日本の5大家具産地の一つに数えられている。Co-Design Challengeでは、北海道産材を使った旭川家具の椅子を万博会場に提供し、国内外からの来場者にデザイン性と高い技術力を体感してもらう予定だ。その歴史をひもとくと、北海道産材の良質さに気付かせてくれたのは、ヨーロッパの木工家具だった。

 北海道大雪山系――。厳しい自然環境で生育するナラは銘木として、北海道オークと呼ばれる。山上ではマイナス40℃、夏には30℃近くになる環境の変化は、冬と夏の成長スピードの違いを生み、比重が高く目が細かい、強度のある木材が育つ。しかし戦後、ナラは鉄道の枕木や薪に使われ、旭川では家具材としてはあまり扱われていなかった。

 1962年、旭川市の海外派遣技術研修制度により、製造技術習得のため西ドイツに3人の木工青年が派遣された。その一人であった長原實が立ち寄った港町にうずたかく積まれた木材には『OTARU』と焼き印があった。旭川の大雪山連峰周辺で伐採した木材が小樽港から輸出されていた。

 旭川家具工業協同組合理事長の藤田哲也は、「彼は衝撃を受けたに違いない。自分が育った地域から輸出された木材が、素晴らしいデザインと技術により、世界で高級家具として売られている。その実態を知った長原實は、西ドイツで3年半修行を積み、『木材を生かすデザインと技術で世界に並ぶ仕事がしたい』という思いで帰国後の1968年に作った会社がカンディハウスです」と、藤田が現在会長を務めるカンディハウス誕生と密接に関わる旭川家具の歴史を語る。

 この研修の成果は、良質な北海道材を生かすものづくりへ向かう旭川家具にとって、大きな転機となった。1965年の第10回全国優良家具展では、旭川家具が最高賞「内閣総理大臣賞」を受賞。1967年にスペインで開催された、23歳以下の技術者が参加する技能五輪国際大会の家具部門に日本代表として旭川の家具職人が挑み、世界第2位を獲得。旭川家具の技術力は世界で高く評価されることになった。2024年9月にフランスで行われた同大会の日本代表も旭川の家具職人で、実に9大会連続で旭川から選出されている。

 「北海道の良質な木材と世界に認められた高い技術。その技術力があるからこそ再現できるデザイン力が旭川家具の魅力です。デザインに関しても、世界を意識した積極的な取り組みをしているので、Co-Design Challengeに参加してみてはどうかと我々の活動を知る方が声を掛けてくださった」。藤田が言う、世界に先駆けたデザインの取り組みとは。

Vol.2に続く

旭川家具の技術やデザイン、歴史が学べる、旭川デザインセンター2階「ADC MUSEUM」

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