「捨てるしかなかった古着や古布に付加価値をつけ、もう一度市場に出していく。デザイン性も妥協しない」。その思いをベンチという形で表現し、万博会場へ提供するプロジェクトは進む。
カラーループの内丸が確立したカラーリサイクルシステムに基づき、ナカノで古着や古布の色分別を行い、家具デザインの実績を豊富に持つアボードとの異業種3社による共同開発で、ベンチの材料となるボード「TEXLAM(テクスラム)」が誕生した。
TEXLAMは、廃棄繊維を色で分けてフェルトにし、異なる色のフェルトをレイヤー状に重ねていく。アボードの吉田は「ベンチに必要な強度、加工がしやすい密度、持ち運びがしやすい重量などの条件を満たすために30種類以上の試作を重ねてたどりついた」と自信を持つ。万博には5台のベンチを提供する予定だが、三六判と呼ばれる縦横が約180cm×約90cmサイズのテクスラムが50枚近く必要になる。
2024年10月、待望のベンチの試作品が完成した。部品や接着剤を使わずにTEXLAMを組み立てていくシンプルな構造だ。試作品は実際のベンチの1/3サイズで、重さは約26kg。Tシャツ1枚を100gとして換算すれば約156枚分の繊維を使う計算で、万博会場へ納品する5台分だと2350枚分をアップサイクルしたことになる。座面を大きくすることを検討しているため、もう少し増える可能性もある。二色からなるレイヤー部を表面に出すことで生み出される網目状の曲線と独特の素材感が遠目からでも目を引く。CGイメージの段階では、組み上げた際の段差を懸念していた吉田だが、心配のない仕上がりで、座り心地も悪くない。会場には青と緑のベンチを提供する予定だ。試作品を見た吉田は、「いい感じでクラフト感が出ている」と手応えを口にした。内丸がこだわった「きれいな色」についても深みのある青が表現できた。
ナカノの工場では、内丸の指定したカラーチップなどを基に手作業で古着や古布の色ごとの選別が進む。吉田は、試作品を見直してベンチの奥行きや全体のフォルム調整などの追い込みにかかっている。
「色」を突破口に循環型経済のモデル作りに挑戦してきた内丸が力を込める。「リサイクルだからと手にしてもらうのではなく、まずすてきだな、おしゃれだなと感じてもらえるモノづくりをしていきたい」。内丸の発想力と行動力が同じ志の仲間を呼び込み、Co-Design Challengeを契機に大きな実を結ぼうとしている。
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