プレスリリース

2025.03.14 「いのち輝く未来社会のデザイン」万博テーマを象徴し自然と共存するアート「静けさの森インスタレーション」の参画アーティストなど発表

左から忽那裕樹ランドスケープデザインディレクター、濱田賢司アサヒグループジャパン株式会社代表取締役社長 兼 CEO、
宮田裕章テーマ事業プロデューサー、髙科淳 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 副事務総長、藤本壮介会場デザインプロデューサー

 2025年4月に開幕する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では『未来社会ショーケース事業』の『アート万博』のひとつとして、「静けさの森インスタレーション」を会場内で開催します。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、開催に先立ち、宮田裕章テーマ事業プロデューサーらによる記者発表会を2025年3月12日(水)に行い、全貌を発表しました。(以下、敬称略)

 静けさの森は、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の象徴として会場の真ん中に位置し、来場者が自由に散策することができます。中央にある直径20mほどの池を囲むように、万博記念公園をはじめ大阪府内の公園等から将来間伐予定の樹木など約1,500本を移植しており、周辺の森で枯れゆくいのちを再生し、生態系との共創を象徴する空間です。森は自然に育った不揃いの樹木を組み合わせることで多様性を表現しており、会場の様々なパビリオンをつなぐ役目も果たします。デザインは会場デザインプロデューサーの建築家藤本壮介と、ランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹が担当します。また、アサヒグループジャパン株式会社に、本事業へ協賛いただきます。

 「静けさの森」では、大阪・関西万博の『テーマウィーク』事業の7つのテーマを主題に、そのテーマに沿った森と共存するアート体験を展開します。宮田裕章と長谷川祐子との共同キュレーションのもと、オノ・ヨーコ、レアンドロ・エルリッヒ、トマス・サラセーノに加え、ピエール・ユイグ、PNATの5組の世界の名だたるアーティストが作り上げた作品を、新しい命が芽吹く静かな森の中で鑑賞・体験することができます。森という象徴と多様なアートを通して、「いのちの輝き」を感じながら人間が自然と技術、文化をどのように結び合わせられるのかを万博会場で体験することになります。新たな万博の姿が単なる技術のショーケースではなく、「これからのいのちの営みの中で未来をどう創造するのか」という根源的な問いを投げかける場として再定義されることを提案します。

 また、期間中に開催される「テーマウィーク」と連動し、宮田裕章と他のテーマ事業プロデューサーらの万博関係者との対話イベント、世界トップクラスのシェフとの食のセッションイベントも開催します。

「いのち輝く未来社会のデザイン」万博テーマを自然と共存するアートに 静けさの森インスタレーション

■静けさの森とは
「静けさの森」は、大阪・関西万博会場となる夢洲で、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の象徴として、会場の真ん中に位置しており、万博記念公園をはじめ、大阪府内の公園等から将来間伐予定の樹木なども移植し、新たな生態系を構築しております。開園時には、約1,500本を超える樹木が芽吹き、新緑のなか来場者を迎えます。

・広 さ:約 2.3ha
・樹木本 数:約 1,500 本
・水景施設:池 1 か所、水盤 3 か所
・樹 種:アラカシ、イロハモミジ、エゴノキ、クヌギ、コナラ、ヤブツバキなど
・移植元公園:万博記念公園、服部緑地、久宝寺緑地、大泉緑地、鶴見緑地、大阪城公園など

■静けさの森インスタレーション
静けさの森を舞台に、大阪・関西万博の主要テーマ「平和と人権」「未来への文化共創」「未来のコミュニティとモビリティ」「食と暮らしの未来」「健康とウェルビーイング」「学びと遊び」「地球の未来と生物多様性」の7つのテーマで、アーティストが手がけるアート体験やイベントを実施いたします。テーマ事業プロデューサー宮田裕章、会場デザインプロデューサー藤本壮介、ランドスケープデザインディレクター忽那裕樹、共同キュレーターの長谷川祐子らが手掛けます。喧騒から離れた新しい命が芽吹く静かな森の中で、“いのち”をテーマにした様々な体験を通じて、来場者は地球や自分自身の“いのち”に思いを馳せることができます。

・担当プロデューサー
宮田裕章 テーマ事業プロデューサー 企画・監修・共同キュレーション
藤本壮介 会場デザインプロデューサー 企画・監修

・参画メンバー
忽那裕樹 ランドスケープデザインディレクター
長谷川祐子 アートディレクター 共同キュレーション
桑名功 クリエイティブディレクター
大田由香梨 「森の饗宴」コーディネーター
福武英明 アートアドバイザー

・アート体験テーマ:アーティスト《作品名》
未来のコミュニティとモビリティ:トマス・サラセーノ《Conviviality》
健康とウェルビーイング:レアンドロ・エルリッヒ《Infinite Garden – The Joy of diversity》
学びと遊び:ユイグ《Idiom》《La Déraison》
平和と人権:オノ・ヨーコ《Cloud Piece》
地球の未来と生物多様性:ステファノ・マンクーゾ with PNAT《The Hidden Plant Community》

・イベント体験テーマ:イベントテーマ
未来への文化共創:Dialogue for Co-innovation
食と暮らしの未来:食を通じて人々をつなげる体験

世界の名だたるアーティスト5名が手掛ける5つのテーマを題材にしたアート体験

■未来のコミュニティとモビリティ:トマス・サラセーノ《 Conviviality 》
森の中に雲のような、鳥の巣箱のような複数のオブジェを浮遊させることで、生命の多様性を感じさせる作品。細やかなワイヤーで空間に吊り下げられたオブジェは、森と共鳴し合う生態系の拠点であり、鳥や昆虫をはじめ多様な生命が往来する有機的なプラットフォームとして機能する。人々は光と風が交差する中で浮かぶ巣箱を見上げる体験を通じて、地上に暮らす自身の存在をより広大な生態系の文脈へと拡張し、世界のありようを再考する契機を得ることができる。

<プロフィール>
トマス・サラセーノはアルゼンチン生まれでベルリンを拠点に活動するアーティスト。
そのプロジェクトは生命体や生命形成と対話し、資本新世における支配的な知識の再考を促す。20年以上にわたり、Museo Aero Solar(2007-)やAerocene Foundation(2015-)など、環境社会正義に向けたオープンソース、集団的、学際的なプロジェクトを主導してきた。『Arachnophilia』(2018-)は、クモ恐怖症と資本新世を超えるための10年にわたる研究を発展させた作品である。サラセーノは、人間、テクノ、生物多様性のより均等なバランスを追求するために、コミュニティ、研究者、機関と協力している。マサチューセッツ工科大学(MIT)、フランス国立科学研究センター(CNES)、ゲーテ・インスティトゥートでレジデンシーを行い、COP20、COP21、COP26では介入を行った。
彼の作品は、メトロポリタン美術館、パレ・ド・トーキョー、サーペンタイン・ギャラリーなど、世界中の主要施設で展示されている。

■健康とウェルビーイング:レアンドロ・エルリッヒ《 Infinite Garden – The Joy of diversity 》
円柱状の空間に多様な植物が生い茂り、上から見るとホールケーキを十字に切ったような形になっている。切り目である通路を進むと、両側面に配置された鏡が自分自身や空、森を映し込み、無限に広がるような錯覚を体験できる。さらに外側に回り45度などの位置に立つと、目の前も鏡となっており、多様な植物の中に溶け込んだかのような感覚を味わえる。まさにエルリッヒ特有の「鏡や構造を用いた視覚のトリック」が、多様性と自然との一体感を生み出し、新たな認知的体験へと人々を誘うのである。

人々は“空へ無限に続く感覚”と“多様性の中に身を委ねる感覚”を味わうことで「新しい見方」に気づき、身体的・精神的・社会的なウェルビーイングをより深く考えるきっかけを与えてくれる。

▼参考作品

<プロフィール>
 1973年アルゼンチン生まれ。パリ、ブエノスアイレスを拠点に活動。過去20年間、彼の作品は国際的に展示され、ヒューストン美術館、ポンピドゥー・センター(パリ)、金沢21世紀美術館など多くの施設に収蔵されている。現実の知覚的基盤と、視覚的枠組みを経て私たちが無意識のうちに常識と考えてしまっている世界観を作品体験を通じて問い直す。美術館やギャラリーの空間と日常的な経験との間の距離を縮めるとともに、私たちが信じているものと私たちが見ているものとの間に対話を生み出すことを試みている。

■学びと遊び:ピエール・ユイグ《Idiom/La Déraison》
「La Déraison」は、ひと目には普通の彫刻のように見えながら、人肌のような温かみをもつ特殊な素材でつくられており、苔をまとうことで作品自体も森と共存する。さらに同じ展示空間で「Idiom」というマスク型の立体作品を用いたパフォーマンスが行われます。マスクを被ったパフォーマーは明確に生きている人間であるはずが、まるで生命感を失ったオブジェのようにも見える。こうした空間における体験において「生きている/生きていない」という一般的な区分は一層曖昧化し、私たちが普段どのように“生命”を捉えているのかを深く問い直す機会となるのだ。こうした違和感や揺らぎが、ユイグの作品の核心ともいえる。

<プロフィール>
1962年フランス・パリ生まれ。現在はサンティアゴを拠点に活動。その作品は国際的に知られ、世界各国の様々な展覧会で紹介されている。
最近の主な個展に「Liminal」プンタ・デッラ・ドガーナ、ヴェネツィア(2024)/ リウム美術館、ソウル(2025年) 「UUmwelt」サーペンタイン・ギャラリー、ロンドン(2018年) 「ソトタマシイ」太宰府天満宮(2017)など。2017年ミュンスター彫刻プロジェクト”After a Life Ahead”、2015年メトロポリタン美術館ルーフガーデンプロジェクト、2012年”Untiled” dOCUMENTA (13)など大規模プロジェクトも多数手がける。2019年には「岡山芸術交流2019 もし蛇が」の芸術監督に就任。作品はポンピドゥー・センター、ニューヨーク近代美術館などに所蔵されている。

■平和と人権:オノ・ヨーコ《 Cloud Piece 》
バケツの底に鏡を仕込むことで、空を映し、まるで空の雫をためるかのように見せる詩的なコンセプトをもつ作品。作品は会場内の静けさの森の泉につながる四叉路の2箇所に設置されている。「空」というあらゆる人々に開かれた“共有の風景”を見つめながら、社会や国境を超えたつながりへの意識を高めることで、平和について思いを巡らせるような体験をつくり出している。

<プロフィール>
1933年に東京で生まれた影響力のあるアーティスト、ミュージシャン、活動家です。1960年までにニューヨークのアートシーンの重要な人物となり、「カット・ピース」や「グレープフルーツ」などの先駆的な作品を制作しました。1968年には、夫のジョン・レノンと共にアート、音楽、活動においてコラボレーションを始めました。オノはグラミー賞を受賞した「ダブル・ファンタジー」を含む多数のアルバムをリリースし、彼女の作品はMoMAやテート・モダンなどの会場で展示されています。70年以上にわたるキャリアにおいて、オノのアーティストおよび活動家としての仕事は依然として特異に重要であり、アーティストと観客の境界を挑戦し続けています。

■地球の未来と生物多様性:ステファノ・マンクーゾ with PNAT《The Hidden Plant Community》
樹液が幹を流れる音を科学的な音波データから変換した、音と光による作品。木が酸素と二酸化炭素を調整する気孔の働きを模倣しており、キネティックが開閉することで光と影の効果を強調する。植物の視点から世界を見るユニークな体験で、“植物として生きる”とはどういうことかを直感的に感じ取ることができる。このアートを体感し、植物の仕組みに耳を澄ますことで、人間中心主義の世界観が問い直され、より広い生命観や時間軸で世界を捉えることができる。

<プロフィール>
PNATは、ステファノ・マンクーゾが率いる学際的なチームで、アート、科学、テクノロジーを融合させ、革新的なインスタレーションを制作しています。持続可能性とエコロジカルな意識に焦点を当てたPNATの活動は、自然と先進技術の交差点を探求しています。また、環境問題と地球の未来についての考察を促す革新的なプロジェクトの開発も行っています。PNATは、最先端のテクノロジーと自然の要素を組み合わせることで、私たちを取り巻く世界とのつながりについての理解を深めます。大阪・関西万博では、PNATは自然、科学、人間の創造性の調和のとれた関係というビジョンを提示し、来場者を示唆に富む没入型の体験に引き込みます。

トップアーティスト陣が手掛けるイベント

■未来への文化共創:Dialogue for Co-innovation
宮田裕章と他のテーマ事業プロデューサーをはじめとする万博関係者との、テーマウィーク連動の対話イベントを開催予定です。

■食と暮らしの未来:食を通じて人々をつなげる体験
5つのテーマで世界トップクラスのシェフとの食のセッションイベントを開催いたします。各テーマに即したトークイベントや企画で食を通じて人々をつなげる体験になります。

担当プロデューサー プロフィール

■宮田 裕章(ミヤタ ヒロアキ/Hiroaki Miyata)/企画 監修 共同キュレーション
2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)
2009年4月東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 准教授、2014年4月同教授(2015年5月より非常勤)、2015 年 5 月より慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授

データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。専門医制度と連携し 5000 病院が参加する National Clinical
Database、LINE と厚労省の新型コロナ全国調査など、医学領域以外も含む様々な実践に取り組む。それと同時に、アカデミアだけでなく、行政や経済団体、NPO、企業など様々なステークホルダーと連携して、新しい社会ビジョンを描く。宮田が共創する社会ビジョンの 1 つは、いのちを響き合わせて多様な社会を創り、その世界を共に体験する中で一人ひとりが輝くという“共鳴する社会”である。

■藤本 壮介(フジモト ソウスケ/Sousuke Fujimoto)/企画 監修 会場デザイン
1971年北海道生まれ。

東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では、2025年日本国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任。2024年には「(仮称)国際センター駅北地区複合施設基本設計業務委託」の基本設計者に特定。
主な作品に、ブダペストのHouse of Music (2021年)、マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設(2021年)、白井屋ホテル(2020年)、L’Arbre Blanc (2019年)、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013 (2013年)、House NA (2011年)、武蔵野美術大学 美術館・図書館 (2010年)、House N (2008年) 等がある。

参画メンバー 一部プロフィール

■忽那 裕樹(クツナ ヒロキ/Hiroki Kutsuna)/ランドスケープデザイン
ランドスケープデザイナー・株式会社E-DESIGN 代表取締役

公園、広場、道路、河川の景観・環境デザイン、およびその空間の使いこなし、さらには、その持続的マネジメント・しくみづくりを同時に企画・実施するという手法を駆使することによって、新しい公共を実現し、魅力的なパブリックスペースを創出することを目指し、数多くのプロジェクトを手掛けている。また、大学、病院、学校、商業、住宅のランドスケープデザインについては、広く国内外をフィールドに活動中。編著に『図解 パブリックスペースのつくり方』(共著 2021年)。現在、大阪・関西万博のランドスケープデザインディレクターを務めている。

主な作品に、「近畿大学洗心の庭」(2009年 日本造園学会奨励賞)、「水都大阪のまちづくり」(2016年 日本都市計画学会石川賞共同受賞)、「草津川跡地公園(区間5)」(2017年 都市公園等コンクール 特定テーマ部門国土交通大臣賞)、「トコトコダンダン」(2018年 GOOD DESIGN賞・金賞:経済産業大臣賞/2019年 日本造園学会賞)、「大阪府立江之子島文化芸術創造センター」(2019年 地域創造大賞・総務大臣賞)、「大東市公民連携北条まちづくりプロジェクト morineki」(2024年 建築学会賞共同受賞)、「シーパスパーク」(2024年 都市公園等コンクール 国土交通省都市局長賞/土地活用モデル大賞 国土交通大臣賞)

■長谷川 祐子(ハセガワ ユウコ/Yuko Hasegawa)/共同キュレーション
金沢21世紀美術館館長/ 東京藝術大学名誉教授、
総合地球環境学研究所客員教授。国際文化会館アートデザイン部門プログラムディレクター
キュレーター/近現代美術史。京都大学法学部卒業。
東京藝術大学美術研究科修士課程修了。水戸芸術館学芸員、
ホイットニー美術館客員キュレーター、世田谷美術館学芸員、
金沢21世紀美術館学芸課長及び芸術監督、東京都現代美術館
学芸課長及び参事を歴任。

【静けさの森 インスタレーション】
◇ゴールドパートナー :アサヒグループジャパン株式会社