会場内には、さまざまなアート作品がいたるところにあるのをご存じですか?
国や地域、民族など、多様なバックグラウンドを持つ世界中のアーティストが手掛けた作品が会場内の21か所に展示されています。
未来社会ショーケース事業「アート万博」の取り組みのひとつとして、オブジェや壁画など、さまざまなアートが会場中に展示されています。
すでに会場に訪れたことのある方は、会場内を歩いているとき、これなんだろう? とふと足を止めたくなる作品を目にしたことありませんか?
次のパビリオンまで急がなくちゃ!というときは、気になる作品があっても、それを横目に通り過ぎていたかもしれません。
このシリーズ記事では、会場内にある21のパブリックアート作品を順番に紹介していきます。
今回は、「フューチャーライフゾーン」にある6つのパブリックアートを巡ってみましょう。
西ゲートのさらに西のエリアを「フューチャーライフゾーン」と言います。
未来の都市パビリオンや、フューチャーライフヴィレッジ、ギャラリー West、モビリティエクスペリエンスなどに加えて、野外イベントと言えば!のEXPO アリーナ「Matsuri」があるエリアですね。
このエリアには6つのパブリックアートがあるので、中心から一番遠いアートから紹介してまいりましょう。
作品名:The Woman with Terrestrial Malady ”LEM”(地上病の女 ”レム”)
アーティスト:REMA(提供 I.F Art SG Pte Ltd)
未来の都市パビリオンの目の前にあるその大きな像は、このエリアでひときわ存在感を放っています。
どれくらいの大きさかというと・・・
横を歩く来場者のみなさまとの対比で、一目瞭然です。とにかく大きいんです。
「The Woman with Terrestrial Malady ”LEM”(地上病の女 ”レム”)」という、なんとも悩ましい作品名のこの彫像。
人魚と言えば、謎めいた存在ですよね。神秘的であるのに不気味な怪物のよう、一方で美しい女性による誘惑の象徴として描かれることもあり、現代の人々の欲望や幻想も反映しています。彫像の頭部は、実は作者自身を模しているそうなのですが、顔がありません。顔を失った彫刻“LEM”は、匿名性や社会が生み出す固定化されたイメージを映しながらその枠組みが常に変容していくことを示唆しているんですって。
実はこの作品、タイのプーケットにあるVILLA LEMへ常設する大型彫刻プロジェクトの一部とのこと。他の作品もチェックしてみたいですね。
作品名:潮流
アーティスト:中西保裕(提供 中西石材店)
パッと見て、御影石!とわかるくらい、晴れた日にこの黒い石の彫刻は光り輝いています。
2018年、東京国立新美術館にて開催された第82回自由美術展に出展され、グランプリを受賞している作品です。御影石ならではの特徴であるその耐久性から、屋外の環境におかれても経年による輝きの衰えもなく、鏡面のようになった曲面が周りの景色を映し出します。
中央には、粗削りの「穴」があります。ぜひ、上からこの穴を覗き込みましょう。
彫刻のタイトルの「潮流」から、まるで中央に向かって渦をまいて流れ落ちる渦潮のように、じっと見ていると、中に吸い込まれていくような感覚に陥ります。
磨き上げられた黒く輝く曲面と、この荒々しい凹面部分の対比を、ぜひお楽しみください。
作品名:私が消える場所 ─ 現実の境界に映るもの
アーティスト:DONECY(提供 Study:大阪関西国際芸術祭)
EXPOアリーナ「Matsuri」のさらに向こう側にあるくら寿司と万博サウナ太陽のつぼみの間に、このアートはあります。台座も含めて、全体が鏡面仕上げ。初めて見たときの印象は、「これはなんだ? クリップのおばけ?」でした(ごめんなさい!)。
この彫刻は、遠目にははっきり姿が見えるのに、近づくと鏡に映し出された自分に視線が集中してしまい、彫刻の存在が視界から消えてしまう、そんな解釈で、「見る」という行為の本質を問い直し、鑑賞者を現実と虚構の世界に誘う作品となっております。
筆者が映らないように撮影していますが、正面に立つと、本当に「鏡に映った私」と対面してしまう、不思議なアートです。このかわいい、一筆書きフォルムのキャラクターに名前をつけたくなるのはわたしだけでしょうか・・・
作品名:海の記憶 喜界島 サンゴの方舟
作者:SceNEプロジェクト(地球研)(提供 Study:大阪関西国際芸術祭)
あまりにもその場になじんでいて、アート作品がおいてあると気付いている人は少ないかもしれません。植栽のすぐわきにあるこの珊瑚のアート。なんと、喜界島のとてつもなく大きな珊瑚をくりぬいて作られた“芋洗い鉢(トーニ/フムラー)”が4点と、島にある37の集落から提供された珊瑚60点により構成されています。
作品に添えつけられたQRコードを読み取ると、島のライブ映像や現在の状況(海水温度などのリアル情報!)までもチェックできちゃう、万博を通して喜界島と世界をつなぐ、見るだけじゃないアート!
喜界島は、鹿児島県に所属する、鹿児島と沖縄の間に連なる奄美諸島の中の島のひとつです。奄美大島の東に位置するその島は、島全体が隆起性のサンゴ礁の島。
現地のライブ映像なんか見てしまったら、行ってみたくなること間違いなしです!
作品名:Love Stone Project EXPO 2025
作者:冨長敦也(提供 Study:大阪関西国際芸術祭)
EXPO アリーナ「Matsuri」の南東、西ゲートの営業施設の西橋に、まるで座ってくださいというばかりにちりばめられた5つの石たち。よく見ると、アート作品であることを示す銘板が設置されていました。作品名「Love Stone Project EXPO 2025」にある“Love”を表す、ハートをイメージする石の彫刻です。撮影に向かったときには、修学旅行生でしょうか、多くの学生がこれらの石の傍らで休憩をしておりました(笑)。
こちらのアートは、先日「石磨きワークショップ」なるイベントが開かれ、有志のみなさまによって、アート作品がピカピカに磨かれておりましたよ。
作品名:希望の系譜
作者:BAKIBAKI(提供 Study:大阪関西国際芸術祭)
西ゲート入ってすぐ右側の建物の壁に、そのアートは描かれています。撮影のためにその場所を訪れた日は、何組かの家族が「待ち合わせ場所」にしていました。ゲート近くで、ひときわ目立つこの壁画は、1970年出版の「奇想の系譜」で再評価された歌川国芳の作品をオマージュして制作されたアートです。
パブリックアートの壁面アートシリーズでも、群を抜いて躍動感のある印象深い作品ですね!
朝一番に西ゲートから入場したお客様は、すぐに左方向へ向かいがちですが、お帰りの前にでも西エリアへお越しいただき、ぜひ、この勇ましい鯉のアートを眺めてみましょう!