スイスパビリオン|ハイジがつなぐ、スイスの伝統とイノベーションの世界

スイスといえば『アルプスの少女ハイジ』に象徴される、豊かな自然をイメージする人は多いのではないでしょうか。しかし、ここ大阪・関西万博ではそれだけではありません。スイスパビリオンでは、「ハイジと共に、テクノロジーの頂へ」をキャッチフレーズとするスイスの価値観や最先端技術を紹介する展示が多数披露されます。ふわふわと浮かぶシャボン玉のような建物は、まるで魔法のよう。この中には、これまでにない体験が待っています。シャボン玉が現れる展示室では、自分の夢や未来への思いがAI技術によりデジタルアートとして投影され、多くの人と共有されるエモーショナルな体験のほか、「ハイジカフェ」では日本風にアレンジされたスイスの料理も味わえます。さあ、ハイジと一緒に、スイスの伝統とイノベーションの旅を楽しみましょう。

スイスパビリオンの特設サイト

Manuel Salchli
Commissioner General Swiss Pavilion Expo 2025 Osaka, Kansai
マヌエル・サルクリ
2025年日本国際博覧会(⼤阪・関⻄万博)スイス連邦陳列区域政府代表

2025年1月。私たち万博SNS取材班は、建築の進むスイスパビリオンを訪れました。出迎えてくれたのはスイス連邦陳列区域政府代表のマヌエル・サルクリさんと、チームメンバーの方々。フレンドリーで開かれた雰囲気の中で、パビリオンやスイスの人々の思いを語っていただきました。
「日本の多くの人が知っているハイジのイメージも大切にしながら、スイスの技術革新についてもお伝えしたい」という、マヌエル・サルクリさん。シャボン玉のようなパビリオンに込められた、未来への想いを紐解いていきます。

-スイス・パビリオンといえば、やはりこの球体の建物が印象的です。
それぞれにどのような意味があるのでしょうか?

この4つの球体は、「価値観(Values)」、「ビジョン(Vision)」、「期待(Anticipation)」、「喜び(Joy)」を表しています。これら一連の球体を旅することで、伝統的なアルプスのイメージから、最先端技術の拠点として世界的に進化していくスイスを感じていただく「ハイジと共に、テクノロジーの頂へ」という体験を提供します。
スイスは2005年に、日本国際博覧会(公式愛称:愛・地球博)に参加しました。それから20年の時が経ち、今回の「ハイジからハイテクへ」というコンセプトのもと、本パビリオンの設計に臨みました。ぜひ、スイスの伝統はもちろん、世界に誇る技術革新の部分もご覧いただけたらと思います。

-この透明な建物にも、スイスの技術がつまっていそうですね!

このパビリオンはごく軽い素材で構成されており、スイスがこれまでに万国博覧会のために建設した構造物において「最小のエコロジカル・フットプリント(Ecological Footprint)」となるでしょう。

球体の膜は特殊な材質で、重量は400kg以下、従来の素材で作る建造物と比べると1%程の重さしかありません。運ぶときや建造時の負荷も軽減されており、二酸化炭素の排出量も最小限に抑えられています。この自然に優しく、開放的な雰囲気の建物の中で、将来の夢や未来について考えるインタラクティブな体験を提供していきます。今回、京都デザイン・ラボ(京都工芸繊維大学)の方々に協力していただき、建物の重量と全体的な環境への影響を詳細に測定しました。

建築中のパビリオンの様子。球体はごく軽く、巨大な工機がなくてもスムーズに組み上げられていく。

-シャボン玉のようなモチーフや「軽さ」をポイントとした理由は?

スイス・パビリオンの設計者、マニュエル・ヘルツ・アーキテクトンさんは「自然の中に埋め込まれた建物」を目指してここを設計しました。「自然」と「人工」の世界が、未来に向けてどのように共存できるか示したいと考えたのです。
展示のテーマともリンクするシャボン玉のようなモチーフは、日の光を自然に透過し、中に入っても心地良い空間となります。また、屋外には、藤が生い茂るような植栽がなされます。藤は年に数回青い花を咲かせる日本原産のつる性植物ですが、じつはスイスでも大変人気があるんですよ!地面から徐々に成長し低い部分を伝って、万博が始まる頃には花を咲かせる予定です。球体を植物の世界が美しく包み込んでいくでしょう。

光を透過するシャボン玉のようなこれまでにない建築は、「スイス・イノベーションの魔法の球体」と呼ばれている。
外から見ても、中から見ても新しい体験ができる。

-来訪者がどんな体験ができるかについても教えてください。

1つめの球体ではスイスの文化や技術革新について、美しい切り絵の作品でご紹介します。どこかに登場するハイジを探しながら、ぜひ楽しんでストーリーを追ってみてください。2つ目の球体では、訪問してくれたそれぞれの方の「夢」をシャボン玉に詰めて飛ばすような、アート的体験ができます。3つ目の球体では、「人間拡張(Augmented Human)」、「生命(Life)」、「地球(Planet)」、の3つのテーマにそった展示を予定しています。これらの展示は一定期間(約2か月毎)で切り替わりますので、パビリオンに何度も足を運んでくださったら嬉しいです。そして、4つ目の球体では来訪者の夢や未来が投影されたのち、虹とハイジが現れます。

それぞれの球体で、新しい体験ができ、通り抜けた先に、伝統とイノベーションをつなぐハイジが待っている。
巨大な切り絵の作品がお出迎え。
夢を込めたシャボン玉が浮かび上がる。

-シャボン玉や未来の投影…素敵な体験ができそうですね!

もちろん!さまざまな技術的検証も行って準備してきましたので、今までにないものをお見せできると思いますよ。一方向の展示だけではなく、来てくださった方々が、インタラクティブ(相互)に想いを共有して体験ができるようなものを目指しています。他者と価値観を共有しながら、未来を目指すことの素晴らしさを表現したいと考えました。

来場者の思いが未来に向けてつながっていく様子。

-「人間拡張」、「生命」、「地球」という3つのテーマはどのように選定されたのでしょうか。また具体的にどんなことが展示されるのでしょう?

これらのテーマは、『より良い生活のための未来社会を創造する』という大阪・関西万博のテーマに基づいています。日本のみなさんにとっても興味深い内容になるよう、スイスのスタートアップや大学、機関での調査を経て決定しました。
最初のテーマ「人間拡張」では、開幕直後の2ヶ月間、AIとロボット工学に焦点を当てた展示が行われます。第2のテーマ「生命」では、ライフサイエンスや高齢社会に関する問題を扱い、とくにスイスと日本の両国にとって重要な課題を取り扱う予定です。最後のテーマ「地球」では、持続可能な開発に向けたスイスのイノベーションを紹介します。

-ほかにも、期間限定のイベントがあると聞いています。

まだ詳細は公開できないのですが、パビリオンの展示と並行して、スイスはダイナミックで魅力的なイベントプログラムを予定しています。一般の方に向けては万博の3大テーマを探求しながらも、多種多様なアクティビティが用意されます。また、企業やスタートアップ、学識経験者のために積極的に交流できる場を設けています。

-今回のパビリオンの最後には、ハイジが登場しますよね。
彼女はどのような役割を果たすのでしょうか?

日本の方は『アルプスの少女ハイジ』をよく知ってくださっていると思いますし、親しみをもってみてくれるだろうと期待しています。彼女は作中のイメージから、スイスの豊かな自然の象徴であると思われる方も多いでしょう。ただ、それだけではなく、ハイジは物語中さまざまな年齢、生活スタイル、考え方の人々と交流していきます。自然とテクノロジーの溢れる都会、多様な生き方をつなぐかけはしとなる存在なのです。

最後に登場するハイジは、意外な出現方法で…

-パビリオンを通った先のハイジカフェも楽しみです。見晴らしはもちろん、お料理にも期待しています。スイスと日本のフュージョンメニューもあるとか…?

このカフェはフォトスポットとしてもおすすめですし、美味しいスイスのワインや日本の食材とチーズを使った料理なども提供予定です。さらに、スイスのダブルクリームとラズベリーフィリングを使った「キットカット」も発売しますよ!当パビリオンでしか販売されない限定商品ですし、とっても美味しいのでぜひ食べてみてくださいね。

食事も景色も楽しめる「ハイジカフェ」

-楽しみにしている来場者に向けて、ぜひメッセージをお願いします!

スイスパビリオンは、多様な人々をお迎えすることを目指してきました。
展示のテーマを難しいと感じている方もいるかもしれませんが、対象年齢などはなく、それぞれの視点で楽しんでいただけるはずです。
スイスの伝統やイノベーションに関心を持ってくださる方はもちろん、ハイジを楽しみにしてくださる方にも素敵な体験をお約束します。ご家族連れ、高齢者の方、学生の方、企業や学校関係者の方、多くの人が来てくださるのを心待ちにしています。

スイスパビリオンの皆さん