香取慎吾とショー制作者田中直基が語る「アオと夜の虹のパレード」の魅力とその裏側

リアルな体験が作る「希望」こそが、良い未来づくりのために欠かせない

日本を代表するタレントでありアーティストの香取慎吾さん。2022年12月の東京会場を皮切りに、大阪・福岡・石川・広島・福島と全国を巡回した個展「WHO AM I」を行い、そしてこの5月から人生初のアリーナソロツアー『SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025』を展開している最中、万博のメインショーの一つである「アオと夜の虹のパレード」を観にきてくれた。本ショーのクリエイター田中直基さんとともに、ショーの見どころ、魅力を語り、そして制作者として、いまリアルなクリエイションが必要だという思いなども聞かせてくれた。

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良い未来を見ていいんだと思えた、物語と演出が融合したかつてないショー。

- まず、今、ちょうど見終えたショーの感想をお願いします。

いやー素敵でした!!そして、水と空気を通じて、生命を感じました。
この万博の会場に来てからも、なんか改めて、暗いニュースの中に生きてるんだなっていうことを感じたんですけど。で、このショーを見て、やっぱり未来に向けて前向きに生きないとって思えました。なんか未来を見ていいんだというか。遠い未来じゃない、華やかな未来っていうものを、追いかけていいんだなっていうのを、このショーの時間で感じましたね。

- 特に印象に残ったポイントはありますか?

僕も自分のライブを通じて、ショーの演出をずっとやってきたんです。30年以上。
だから、もともとこういうショーが好きで、色々な国で色々な噴水ショーも見てきたんですけど、これは、本当に見たことのないショーだなって思った。見たことのない水の動きをしてたり、噴水と照明と炎とレーザーとかの組み合わせも新しかった。そこに自分も含めて、周りの人たちもうわーっとなってて(笑)お客さんたちの、普段の生活ではしたことのないであろう表情を見たんですよね。若い頃から、ショーの勉強のために海外に行くことはいっぱいあったんですど、それがこの日本にこんなに素敵なショーがあるっていうのは驚いた。今ここでこれを見た子供たちが、いつか本当に日本にもっと素敵なショーをつくる人になるかもしれない。本当に夢が広がってます。いっぱい。

田中
ショーを見る前に、香取さんと話してて、香取さんがこれまで30年以上ショーの演出をしている話を聞いて、驚いたと同時に作る過程で感じている思考や課題へのアプローチなど共通点の多さにびっくりしました。先日も『SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025』にお邪魔させていただいたんですが、その演出もライブも本当に素晴らしくて感動しました。

香取
そう、だから、スモークやレーザーなど、僕自身がライブ演出で使う機材がたくさんあったので、いろいろ質問しちゃいました。音を立体的にして、登場人物や風などの動きを再現しているところもとても良いなと思った。

現代は「リアル」な体験こそ、必要な時代なのかも

田中
今回のショーを作るときにライブ演出や機材もかなりスタディしました。香取さんとショーを見ながら、機材の話をたくさんできて本当に楽しかったです。でも、このショーは約20分で、それでも僕はものすごく大変だったんですが、香取さんは、3時間以上のショーをたくさん設計されてるんで、敵わないやと思いました。あと、僕の場合、生というか、この一度限りのリアルなコンテンツの仕事の経験は、香取さんのように多くなかったんですが、今回はその大変さも、その素晴らしさも両方感じました。

香取
うん、リアルってやっぱりいいですよね。 見てくれる人たちの顔が笑顔になる、それが見えてくる。こうやってここで、この特殊効果入れて、とか。この音の時にこういう演出をする、ここでお客さんの顔が変わるといいなとか。まさにそれがリアルの醍醐味だと思います。

作り手も見る人も。あらゆるパワーが溢れる空間に感動

- 香取さんは、ショーの最中に周囲のお客さんのリアクションも見られてましたね。

香取

子供達が本当にいい顔してた!なんというか、このショーに注目しているそのパワーがこの場所にあふれていたんです。それこそあまりショーとかライブに行かない人とかも、こうすごいまなざしで見つめてて。この場所に、見に来ている人たちのパワーが詰まっているからね。いや、素敵な空間でしたね。

田中
リアルという意味では、香取さんが作るものは、ライブもそうだし、ペインティングもリアルなものが多いですよね。

香取
そうですね。でも、描く絵の個展はまた別なんです。絵の方はもう、その絵を通じて、見た人が何思うかを考えながらも、そこに正解はなくて、逆に僕はこう思っているのに、お客さんは違うこと思うんだろうなーとか想像しながら展示しちゃったりするのが楽しい。
演出の方は、やっぱり、お客さんの笑顔を考えながら作るから。

田中
なるほど、絵を通じてインタラクティブなやりとりをしてるんですね。それも面白いコミュニケーションですね。

香取
リアルにはやっぱり勝てない。いろんなSNSにあげてる人もいるだろうし、もちろん映像を見る楽しみもあるかもしれないけどね。ここで生で見るのには勝てないよね。そこは忘れないでほしいかなぁと。

田中
香取さんのツアーでも、セットリストとともに繰り広げられる演出に対して、お客さんの顔が本当にキラキラとしてて、リアルの素晴らしさを僕自身たくさん感じることができました。

「希望」や「ワクワク」こそ、いま最も必要な力

- 今回万博に来てみて、どういう印象を持っていますか?

香取
え~~~~~。ワクワクしましたよ。来た瞬間から。なんなんだろうね、マイナスなニュースしか見てこなかった。なんでそんな伝え方になったんですかね。正直本当、プラスマイナスで言ったらマイナスなことしかこの何年か聞いてこなかった(笑)だけど一歩足を踏み入れた瞬間に、ワクワクが広がってすごい楽しいし、逆に言うと、そこの部分知らないで、もっとプラスで来たかったっていうのはある。

- 体験することが大事ですね

香取
うん、大事。

- 田中さんは今日の取材、どうでしたか?

ずーっと大好きな人だったんで率直に嬉しかったです。いつもはショーを客観的に見れていたんですけど、香取さんはこのシーンをどう見てるんだろうとか、そんなこと考えながら見てました。 あと、香取さんがおっしゃった、「希望」とか「未来へのワクワクさ」って、今、世の中に必要な、最後の力なんじゃないかなと思います。正しいことを頭で理解していても、なかなか行動や考えが変えられないことが増えてきた気がしてて。でも、そこで楽しく、ワクワクするような伝え方がもしできたら。大きい声や力じゃなくて楽しく伝えること。
あと、やっぱり「希望」って、どんな力より強いですから。

- ショーを通じて、お二人の共通点が語られるとは思っていませんでした。

香取
もちろんいろいろ便利なものやツールが増えていくのはいいことなのですが、 実際に見たり触れたりするということの素晴らしさはなくならないだろうし、デジタルツールなどが増えているからこそ、もっとそっちが重要なものにもなるかもしれないなと思った。

- 最後に、この記事を読んで、来場するお客さんに対して こういうところを見てほしいみたいなのはありますか?

香取
絶対この水上ショーを見るために時間調整してほしいですね。きっと会場は見どころ満載だから本当に大変だろうけど、みんなここはちょっと合わせないとダメでしょ!(笑)
今日は、こんな素敵なショーを作った方と一緒に横で見られることは光栄でした。

田中
本当に光栄すぎます。香取さんは、僕自身がずっと「希望」や「ワクワク」をいただいてきた方なんで。本当にありがとうございました。

香取
ありがとうございました!

香取慎吾(かとり・しんご)
俳優・歌手・アーティスト
1977年、神奈川県生まれ。映画、ドラマ、舞台で活躍するほか、音楽や絵画などアーティストとしても活動。2024年には、全国を巡回した個展「WHO AM I」を成功させ、2025年5月からは人生初のアリーナソロツアー『SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025』を展開する。

田中直基(たなか・なおき)
クリエーティブ・ディレクター
言葉、デザイン、テクノロジーを自由に組み合わせ、新しい表現や体験を探究するクリエーティブ・ディレクター。TOKYO2020パラリンピック開会式「PARAde of Athletes」や、インクルーシブとクリエーティブを融合した「All Players Welcome」など国内外でボーダレスで力強い表現を発信し続けている。エンターテイメントの国際的アワードTHEA Catalyst Awardを日本人で初めて受賞。Forbes Japan「NEXT100 世界を救う希望」に選出。