2019.07.25
インタビュー
石毛事務総長インタビュー(大商ニュース)

大商ニュース令和元年(2019年)7月25日号に当協会事務総長の石毛のインタビューが掲載されました。

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2025年に開かれる大阪・関西万博の準備と運営を担う日本国際博覧会協会が1月に設立された。5月には日本貿易振興機構(ジェトロ)前理事長の石毛博行氏を同協会の事務総長に迎え、新たな歩みが始まった。石毛事務総長に抱負や万博への期待などを聞いた。

一般社団法人2025年日本国際博覧会協会
事務総長 石毛 博行 氏

いしげ・ひろゆき 1974年通商産業省(現経済産業省)入省。
製造産業局長、中小企業庁長官、通商政策局長、経済産業審議官、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)理事長を経て、今年5月から現職。

高まる2025年万博への期待

事務総長に就任された心境をお聞かせください。

「昨年11月、大阪・関西万博の誘致が決定した時は、出張中で中米グアテマラにいました。吉報を受け、誘致に奔走した日本貿易振興機構(ジェトロ)の職員を電話で労わっていましたが、その時はまさか自分が万博協会の事務総長に就くとは思ってもいませんでした。ジェトロで7年半、重い公の仕事をしていたこともあり、また重い仕事をすることになるのか……と思いましたが、『迷った時には前に進む』という自らの信条に則り、お引き受けしました。とは言うものの、この役割は、知れば知るほど大変だ、『重すぎる』ということが最近わかってきました(笑)。ただ、チャレンジングかつやりがいのある仕事ですので、全力で取り組みたいと思います」

大阪での万博は55年ぶりになります。70年大阪万博が成功した要因、またあの万博から学ぶことは何でしょうか。

「70年大阪万博は、『月の石』などの新しい、珍しいものが多く展示され、それだけでも行ってみたいと思う『万博』だったと思います。しかし、同時に、『人類とは何か』を真剣に問いかける万博でもありました。中でも岡本太郎さんの存在が大きかったと思います。人間のエネルギーにあふれた『太陽の塔』が『進歩の象徴』である『お祭り広場の大屋根』をぶち抜くことで、大阪万博は単なる『進歩の万博』ではなく、人間そのものの存在を強調し、訴えかける万博になりました。岡本太郎さんは先端技術など、先進国に偏った展示を嫌い、世界各国の仮面や神像といった民俗資料を集め、万博に展示することにも注力しました。梅棹忠夫先生に頼んで、若手研究者20人を世界各国に派遣し、地球規模での民俗資料収集を決行するのです。このコレクションがその後の国立民族学博物館のベースとなり70年万博のレガシーとして今日に継承されるに至ります。余談になりますが、私のいとこで、梅棹さんの助手であった文化人類学者の石毛直道もその一員としてオセアニアに派遣されました。パプアニューギニアで手に入れた神像が太陽の塔にそっくりだったので、それを岡本太郎さんに見せたところ、『そうか、オセアニアの原住民も昔から岡本太郎の真似をしていたのか』とおっしゃったそうです(笑)。万博という(科学技術の)進歩、進歩というあの時代で、人類そのものに着目した岡本太郎さんはすごい人だなあ、大阪万博を本当に厚みのあるものにした、と思います」

テーマ具体化が成功のカギ

2025年万博はどのような万博になるでしょうか?また、成功に向けて大切なことは何でしょうか。

「70年万博は工業社会の未来を示す場であり、大阪万博はそのピークでもあったわけです。では、2025年には何をするのか?外から見た日本は、少子高齢化に苦しむ低成長国のイメージです。これを変える貴重な機会です。課題解決国として、『いのち輝く未来社会』を世界に先駆けて、日本、大阪・関西の地で示したいと思います。それにはどうするか?これだけ技術が加速度的に進歩し、その情報が行きわたり、世界中でたくさんの産業見本市が行われている中、『万博の優位性』とは何か?『万博でなければできないこと』とは何か?をとことん突き詰めていかねばなりません。あわせて、『いのちとは?』『生きるとは?』『いのち輝くとは?』といった人間の根源的な問いについて、『それはこういうことだ』と語り、そのメッセージを広く発信することが重要です。今の段階で最も大切なことは、『いのち輝く未来社会のデザイン』というテーマを具現的に定義し、提案することです。それができれば、その後の海外の国の招聘も、資金集めも、そして機運醸成なども力強く進めることができます。そのためには、検討会議でも例えば、泊りがけで、「いのち輝く未来社会」のテーマを突き詰めて議論してゆくことが必要だと思います。主催者である『日本』の各界のリーダーの方々も自らの考えを世界に向けて発信していただくことが必要だと思います。もっとも、万博は人類の祭典・お祭りですから、『まじめなテーマ』だけでなく、『おもろい』ものでないといけない。そうでないと人は来ないと思います。お笑い文化の大阪・関西の真骨頂が問われます」

2025年万博のキーワードとはどういうものだとお考えですか。

「『いのち輝く』は、先進国の関心に即してシンプルに言うと、『健康』『長寿』と言うことです。万博に行くと若返ると言ったことになると面白いですね。が、少し掘り下げると、『心』『精神性』が大事になります。宗教の力が弱くなってきている中、何を基盤にして、何を拠り所にして生きていくのか?また、『いのち』のある限り輝いていること、どう尊厳を保つかが大切です。その点、大きな課題として『認知症』があり、必要とされる取り組みは2つあります。1つは、認知症の予防、あるいはこれを和らげる医療の取り組みです。しかし、データが圧倒的に不足しています。万博はビッグデータを集める良いチャンスです。何か、貢献できないものでしょうか?もう1つは認知症の方をもっと社会に包み込むようにすることです。最近、厚生労働省でも開催された『注文をまちがえる料理店』は素晴らしい試みです。健常者側が、認知症の方に対し、もっと寛容に接することが大事です。そうすると、見える『絵』は変わります。『認知症』は世界が直面する共通課題です。まさにSDGsの具体例として取り組むべきもののように思えます。社会から隔離するのではなく、包み込んでゆくことが大事です。隔離から包摂へ。インクルーシブな世界を作ることがまさに『いのち輝く』未来社会だと思います。もちろん、こうした社会課題への取り組みという点で、もっと明るい側面もあります。『ソサエティ5.0』 として、未来社会を描くことも重要なキーワードです。スマートシティーの実証実験も万博会場だけでなく、それに至るインフラの中でも示してゆくべきでしょう」

万博を大阪・関西復権の好機に

大阪とのかかわり、そして、大阪に期待することや生かすべき大阪の魅力についてお聞かせください。

「大阪で仕事をするのも住むのも初めてですが、前職のジェトロは大阪が発祥の地です。また、経産省時代の94~96年、繊維産業を担当した頃には繊維業界の方々に会うために大阪をよく訪問しました。大阪は戦後まもなく、大阪商工会議所の杉道助会頭のリーダーシップでジェトロを立ち上げました。そんな気概を有し、常に新しいことにチャレンジしてきたのが大阪です。2025年万博もぜひとも大阪・関西の復権の好機として活用していただきたいです。万博は大企業がパビリオンを出して競い合う場と思いこんでいる方もいるかもしれません。しかし、経済の成長・発展を支えるのは中小企業、ベンチャーやスタートアップです。中小企業と言えば大阪です。大阪・関西、あるいは日本中の中小企業が、万博の場において自らのアイデア、メッセージを積極的に発信してほしいと思っています。若者・学生さんにも期待しています。誘致活動に続き、これからも若者の皆さんの協力をお願いします。『いのち輝く未来社会』をテーマに『私が、自分が取り組むのだ』との意識、まさに『やってみなはれ』『いっちょ、やったろうやないか』の精神で、50年に一度の万博に参画していただき、もっともっと盛り上げてゆきましょう。

来年度には、海外に向けての招聘活動がスタートします。海外招聘で大切なことは何だとお考えでしょうか。

「『いのち輝く未来社会』には先進国は強い関心を持っています。このテーマをさらにブラッシュアップすれば、多くの国の参加を得られるでしょう。これに加えて海外の参加について3つのポイントがあります。1つ目はアジアン・パワーです。確かに日本の経済成長力は70年代に比べて低迷しています。ただ、日本とアジアが一体でつながっていると考え、成長著しいアジアの国々を加えれば、全体として70年当時よりその経済力は上回っています。そんなアジアン・パワーを万博の中に反映させること、そして、いまだ万博を開催していないアジアの国々から『次の万博をわが国で』という声があがるように導くことも今の日本に期待される役割であろうと思います。2つ目は、発展途上国です。これまで発展途上国の展示は、生活様式や物産の紹介にとどまることが多かったのですが、次の万博では企画団体から我々がサポートし、デジタル技術などを用いてこれまでとは異なる新たな展示ができないものか?また、それができれば大きな成果になると考えています。3つ目は、インバウンド、大阪・関西の『観光力』の強調です。大阪・関西が有する歴史と文化も大きな魅力です。万博会場をゲートウェイとして様々な寺社や古墳などに世界の人々に足を延ばしていただき、大阪・関西、そして日本を知っていただきたいと思います。日本独自の精神性をそんな中から感じ取っていただきたいのです。会場である夢洲は、水の都らしく、水に囲まれています。海に囲まれています。瀬戸内海に沈む夕陽の美しい眺めで心の安らぎを見出してもらいたいと思います」

お名前が博行ですが、これは万「博」がうまく「行」く、と読めますね。

「ああ、それには今、気づきました(笑)。儒教の経書である『中庸』に『博くこれを学び、篤くこれを行う』という言葉があります。これは、『広く学んで知識を広め、誠実に実行する』という言葉なのですが、確かに『万博がうまく行く』とも読めますので、その名前にはぜひともあやかりたいと思います(笑)。いずれにしましても、地元のご協力や盛り上がりなくしては『うまく行く』ことも成功もあり得ません。皆様のご協力をお願い申し上げる次第です」

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