2024.04.11
インタビュー
催事施設愛称の最終選考会を開催 -選考委員の思いをインタビューしました-

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、2025日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場内に建設予定の4つの催事施設について、一般公募にて愛称を募集しました。最終的に1,596件もの作品が集まり、愛称の選考は5名の外部選考委員に実施いただきました。どのような視点から愛称を選んだのか、大阪・関西万博に期待することは何か、選考委員を務めていただいた一級建築士の永山祐子さん、LDH JAPANの橘ケンチさん、YouTuberのアマンディーヌさん、3名に話を伺いました。

プロフィール

アマンディーヌ
フランス・ボーヌ生まれ。日本への留学、日本人男性との結婚を経て、2021年よりYouTuberとして活動を開始。夫婦で運営するYouTubeチャンネル「ボンソワールTV」は登録者数約55万人を数える。日本在住のフランス人インフルエンサーとして、海外出身者から見た日本の魅力を紹介。


橘 ケンチ
株式会社LDH JAPAN所属。EXILE、EXILE THE SECONDパフォーマー。ダンサーや俳優として活躍する一方で、ライフワークとして日本酒の魅力を発信し、食のフィールドや日本創生に対する知見も深めている。2018年13代酒サムライ、2021年福井市食のPR大使、2023年にはLDH JAPANのSocial Innovation Officer(ソーシャルイノベーションオフィサー)に就任し、社会貢献活動や地方創生プロジェクトに積極的に参画。

永山 祐子
一級建築士。有限会社永山祐子建築設計主宰。ドバイ万博では「日本館」、2025年大阪・関西万博では「パナソニックグループパビリオン『ノモの国』」、「ウーマンズパビリオン in collaboration with Cartier」の2つのパビリオンの建築設計を担当。「JIA新人賞(2014)」「山梨県建築文化賞」「東京建築賞優秀賞(2018)」「照明学会照明デザイン賞最優秀賞(2021)」に加え、「JINS PARK 前橋」において「2022 World Architecture Festival 2022 Highly Commended」「2023iF Design Award 2023 Winner」など受賞歴多数。

最後まで悩むほど秀逸な愛称が集まった

今回、選考委員を引き受けた理由を教えてください

 大阪・関西万博は個人的にとても興味を持っていましたし、「いのち輝く未来社会のデザイン」というコンセプトにも共感していたからです。

永山 私は大阪・関西万博のパビリオンの建築設計に携わっていることもあって、もっと万博を盛り上げていきたいという気持ちで快諾しました。

アマンディーヌ 私は日本の魅力を発信するチャンネルを運営しているのですが、大阪・関西万博に関わることによって、日本のことをより深く知ることができると思って引き受けました。

 私もソーシャルイノベーションオフィサーとして社会貢献や地域活性化に関する事業に携わっているので、今回の万博を通じて大阪・関西はもちろんのこと、日本各地の魅力も伝えていきたいと考えています。

アマンディーヌ 大阪・関西万博を通じて日本に興味を持っていただき、関西を起点に日本各地を旅してくださる人が増えれば、地方創生や社会貢献にもつながっていくのでは、と期待しています。

ー 最終選考会が終了しましたが、現在の率直な感想をお聞かせください

永山 どの案もコンセプトや想い、熱量がしっかり詰まっていたので、選ぶのはすごく難しかったですね。

アマンディーヌ 私もすごく悩みました。どの愛称もとても素敵だったので、しっかり精査したいという気持ちで臨みました。

 本当に迷いましたよね。選考の初期の頃は自分の価値観をベースに選んでいたのですが、他の選考委員の皆さまと議論を重ねるうちに、「世界の中での日本」という視点や、「日本の中での大阪・関西」という視点、「世界中の人に親しまれる名前」という視点など、選考基準は無数にあることがわかってきました。さまざまな視点から考察をして、皆さまとディスカッションしながら一つのゴールを目指すという流れがとても意義深い時間でした。

海外の視点やデザインとの相性など、多様な基準を大切に

永山 私も名前の響きや言いやすさなどは大切にしつつ、選考委員のみなさんの話も参考にしながら候補を絞り込んでいきました。特に国際的な視点での評価基準については、アマンディーヌさんの意見がとても参考になりました。

 アマンディーヌさんは「この愛称は、海外だと違う意味に捉えられる可能性がありますよ」といった話をはじめ、本当にたくさんの意見を出してくださったので、とても感謝しています。世界中の方が接する可能性のある名前なので、ただの主観だけで選んではいけないと強く意識するようになりました。

アマンディーヌ 少し話しすぎたかなと自分でも思いましたが、参考にしていただけて嬉しかったですし、みなさんと意見を重ねながら候補を絞り込んでいく過程はとても楽しかったです。

永山 あとは、せっかく大阪・関西で開催するのだから、「地域性を感じさせる愛称を選びたい」という議論も盛り上がりましたね。こうした視点も選考するうえで大切にしました。

そのほか、選考をするうえで大切にした視点はありますか?

永山 「建築物に合わないような愛称にはしたくない」と考えていたので、建築物のデザインや場所の特徴を十分に把握したうえで名前を決めていきました。

 私も永山さんと同じで、施設の見た目と愛称のフィット感は特に意識しました。ここがミスマッチになってしまうと、見る人には伝わらないと感じたからです。

アマンディーヌ 年齢や国籍、障がいの有無に関わらず、すべての人にとってわかりやすくて、名前を聞くだけでイメージが湧くような愛称を選びたいと思っていました。また、今回は4つの施設の愛称を選んだのですが、それぞれの建物が並んだときに一体感が生まれるかどうかも意識しましたね。

世界中の人や文化と交流し、未来につないでいける万博へ

今回選考した施設で、どのようなイベントが開催されることを期待していますか?

永山 個人的に、2020年のドバイ万博で開催された「ナショナルデー」がすごく印象に残っています。世界各国のたくさんの人が、自分の国を代表してさまざまな催しを披露していて、それぞれの国の表情や個性を知ることができました。今回の大阪・関西万博においても、「ナショナルデー」や「スペシャルデー」のイベントだけでなく、日本中のお祭りが集結するという話があります。伝統的な祭事から新しい表現まで、さまざまなイベントが集結すれば、すごく満足度の高い万博になると信じています。

 私はエンターテインメントの世界に身を置いているので、各施設でライブやフェスが開催される様子をイメージしています。今回愛称を選んだ施設は、ビジュアル的にもすごくインパクトがありますので、こうした素晴らしい場所で、人々の心に響くような踊りや芝居、音楽などのイベントが開催されたら嬉しいですね。

アマンディーヌ 音楽やお祭りは、言語が通じなくても参加・交流できるイベントだと思っています。私が日本を好きになったのも、日本でたくさんの人と交流ができたからなんです。だから国ごとの音楽ライブやお祭りに触れることができたら、その国のことをもっと知りたいという気持ちが湧き上がると思っています。

最後に、万博そのものに期待していることを教えてください

 万博は世界中の人や文化と交流できる貴重な機会だと思います。いろんな価値観に触れ合う中で、私自身も含めて、一人ひとりがもっと多様性を認め合えるようになっていけたらと考えています。また、世界各国の技術やアイデアが交わる場にもなると思うので、そこから何が生まれていくかも楽しみです。

永山 万博は「実証実験の場」という側面があります。私は今回の大阪・関西万博では、リユースやサスティナブルを意識した新しい建築物の設計にチャレンジしています。こうした未来につながる建築をはじめ、さまざまな技術やアイデアが万博を通じて広がることで、世界がより良い方向に変わっていけば嬉しいですね。

アマンディーヌ 私もいろんな技術やアイデアに触れて、そこに込められた想いを肌で感じてみたいです。そのうえで、他の人がどんな感想を抱いたのかを話し合うことができれば、いろんな価値観を知り、理解することにつながるような気がします。

永山 さまざまな国の人が集う万博は考えを共有できる絶好の機会ですし、その積み重ねが次の社会に活きていくと思っています。

 今の世の中、大変なニュースが多いからこそ、一人ひとりがしっかりと対話して、理解しあうことで、多くの人が望む未来に近づく可能性が生まれると信じています。世界の課題はまだまだたくさんありますが、万博が平和や幸せについて考えるきっかけとなるイベントとして、今後も続いてほしいと願っています。

アマンディーヌ 私もたくさんの人が国を超えて交流することは、偏見をなくし、国の壁を壊し、みんなが平等に生活できる未来につながると思います。また、よりよい世界の将来をつくるためには、私たち大人はもちろんですが、子どもたちの力がとても大切になってくるはずです。だからこそ、各国の子どもたちが交流して、価値観を認め合える万博の開催を期待しています。

永山 次世代を担う子どもたちに何を伝えていけるかを考えるのは重要なことですし、万博の意義でもあると思います。私もその力になれるように、まずは今回の大阪・関西万博で、子どもたちにワクワクしてもらえるような魅力的なパビリオンをつくっていきたいです。

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