
丸形のテーブルを半円のタワーが包み込み「囲まれた空間」を演出する。段ボール100個のパーツで組み上げられた、2mに近い高さの展示台の試作品が姿を現した。段ボールの存在感を示すようにあえてむき出しになった断面は、波打つような文様を描き躍動感を感じさせる。髙木が追求する「段ボールの新たな創造」が、未来へとつながるかたちとなった。
提供する14台の展示台は会場の西側 「フューチャーライフゾーン」内の「フューチャーライフヴィレッジ」に置かれる。ここでは、中小企業や教育機関など多様な主体が未来の暮らしへの提案を持ち寄って発表を行うが、その際に使われるのがこの展示台だ。
斬新なデザインを生かしながら、総重量が25kgにもなる展示台の強度や耐久性を担保するために、綿密な設計と様々な工夫が施された。重さ9kg、32インチのモニターの設置は難題だったが、展示台中央に収めることで安定したバランスを生むことができた。素材も木材のような堅さを持つ強化段ボール(1層5mm)を2層に重ねて使っているが、特に物が置かれる丸形テーブルの天板部分は3層にすることで80kgまでの荷重に耐えられる。またプラスチックや金属を一切使わない組み立て型で、リサイクルも可能だ。
奈良県葛城市を拠点にする高木包装にとって、段ボールは「デザインのD」「愛のA」「ナチュラルのN」の頭文字を取った「DANボール」であるという。2017年に父親から社長を引き継いだ髙木は、実用性優先の段ボール製造だけでなく、デザインにこだわり、付加価値を高めていくことで差別化への挑戦を続けてきた。「つくれないものはない」という高い技術力と生産力を背景に「包む」を軸として、新しい価値の創造に取り組んできた。
体験企画では、段ボールケースを毎分300枚仕上げる全自動製函機や高精細印刷機、自動平板打抜機など多彩な段ボールケースを生み出す機械約10台が並ぶ製造工場の見学も用意した。段ボールの生産ラインが一度に見学できる工場は珍しく、わくわく感とモノを作る楽しさを感じてもらえる場となる。
従業員数100人規模の高木包装は、20歳代が3分の1を占める。若さと遊び心を持った「夢を描く会社」へと髙木が先頭になって引っ張る。25年は創業70周年を迎え、万博後の来年には新工場も完成する。万博に使われる展示台も飾り、敷地には地域貢献も兼ねた「ものづくりの学びの場」も設ける考えだ。会社にとっても節目になる年の万博開催。段ボールの可能性で、このステップをさらに未来への大きな力に変えていく。


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