株式会社colourloop
2025.03.06
「古着や古布からベンチをつくる」色が決め手 廃棄繊維をアップサイクル Vol.4
ベンチの試作品

 素材分別が難しい廃棄繊維を色で分けてアップサイクルするという、内丸が考案した「カラーリサイクルシステム」。このシステムを活用したボード素材「TEXLAM(テキスラム)」で作られた第1号作品が大阪・関西万博の会場でお披露目されるベンチだ。青、緑の計5台のベンチは、パビリオン内の円形ステージ前に置かれ、独特の世界観をアピールする。

 デザインを担当するアボードの吉田は、来場者にインパクトを与えるデザインにこだわった。青とベージュ、緑とベージュが幾層にも重なって生む断面の意匠性もTEXLAMの特長だ。吉田は、この断面を巧みにいかしてベンチに有機的な流線形のダイナミックな曲線を描き出した。

 TEXLAMは、内丸が代表を務めるカラーループと繊維リサイクル会社のナカノ、アボードの三社がタッグを組んで共同開発した素材だ。ナカノでは、山積みされた中古衣料がベルトコンベヤーで運ばれていく。まず古着業者が選別し中古着商品に、次に工場のウエスなどの産業素材に、そして残ったものがTEXLAMの原材料となる。繊維そのものを色材そして強化材として再利用するため、雑多な繊維素材がまざっていても破れたりあせたりしていても支障がない。カラーリサイクルシステムによって有効に色分別を行い、衣類を解繊して、フェルト状に加工するなどしてTEXLAMという新たな価値を持つ製品に生まれ変わらせる。万博に出品されるベンチ1台には、Tシャツ(1枚100g)当たりで換算すると、600枚分、計5台で3000枚分もの繊維が使われる。試作品から座り心地などを検証してサイズ変更を行った関係で、当初の想定より多くのアップサイクルが可能となった。TEXLAMは、色や厚み、密度などを自由に変えることが出来るため、建材や内装素材など多方面で活用されれば、新たなリサイクルの道につながる。

 ベンチは、繊維の風合いを生かした独特の質感を持つ。吉田は「素材の魅力が一番だ。こんなものが出来るのかということを知ってもらい、ここからムーブメントを起こしたい」と意気込む。
 内丸は言う。「リサイクル製品だからといって無理に使ってもらうのではなく、廃棄繊維を使ったからこそできる製品を作っていきたい。豊かで楽しい循環型社会を目指す」
 国内では毎年200万トンにも及ぶ廃棄繊維が生じ、その4分の3がゴミとして焼却されている。その課題解決に内丸は「色で素材を循環する」を武器に挑んできた。認知度の向上、コストの問題などハードルも高いが、大阪・関西万博を契機とし、その先に広がる可能性へと大きな虹をかけてゆく。

パビリオン内の円形ステージ前に置かれるベンチの完成CGイメージ
(左から)ベンチに使用するボード「TEXLAM」を手にするアボード 吉田 剛さん、
カラーループCEO 内丸 もと子さん

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