コクヨ株式会社
2024.02.27
「万博で『木育』の輪広げる」老舗文具メーカー 変革の試金石に Vol.1
試作品のベンチを前にデザインや強度について相談する

森林資源とともに成長してきた。だから、保全する使命がある。そんな思いをCo-Design Challengeにぶつけてきた企業があった。誰もが知る大手文具メーカー「コクヨ」だ。取り組んだのは「国産材、地域材活用のための木製ベンチ」。各地域の木材に光を当て、子どもたちの『木育』の輪を広げる、コクヨ自身の変革の試金石だ。老舗企業の挑戦に迫った。

日本の国土面積の3分の2を占める森林は、林業による伐採などの間伐を通じて管理保全されてきた。森林と人は長い共生の歴史がある。そしてコクヨは、机や家具、文具などの商品開発を、主に国産木材を使って進めてきた。いわば、森林資源を活用しながら成長してきた企業だ。
ところが、大量に輸入される外国産材に圧され、国産材の利用が減少。木は伐採されず、森は荒廃した。さらに、日本の林業は後継者不足とともに衰退の一途をたどり始めた。危機感から、コクヨは2006年、高知県の大正町森林組合(2012年に他森林組合と合併し、現在は四万十町森林組合)とともに森林保全活動に挑んだ。県全体の森林の割合が全国1位の森林王国・高知県。日本最後の清流とうたわれる四万十川の流域は、いまも美しい森と豊かな自然を失っていない。まさに活動には格好の地だ。

プロジェクトの名は「結(ゆい)の森」。「結」とは元々、農村で住民たちが助け合ってきた習慣を意味し、その精神への共感から名付けた。主な活動はこうだ。まずは適切に間伐を進め、間伐材を使ったテーブルやイスなどを商品化して林業を支援する。それだけではない。地元の人たちと協力して森周辺の生態系を把握するためのモニタリング調査も行う。環境の変化を実際に目にすることで、間伐をはじめとする保全活動の効果を実証してきた。

シニアマネジャーの足立修一は、こうした活動を通じて気になっていたことがある。「こんなに大切な林業という仕事に対して、地域での尊敬の念が薄れてきている。それは地域愛の喪失ともつながっているのではないか」。子どもたちが木に接する機会を通して、地域の自然の豊かさや森林資源の大切さを学ぶ『木育』という考え方を、もっと広められないか。

この課題に切り込んだのが、今回のCo-Design Challengeの取り組みだ。コクヨの場合、12グループのなかでも趣が少し異なる。地域の木材でベンチを作り、万博会場に置くだけではない。ベンチを作りたい自治体を全国から募り、大阪・関西万博でPRしたい思いを聞き取りながら製作を進めていく。さらに、背もたれや座面などの部材を組み立てたり、色を塗ったりするワークショップを開催し、地域の子どもたちの手で完成させてもらうところがカギになる。

Vol.2へ続く

コクヨ 会長室兼 EXPO2025タスクフォース 足立 修一さん

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