エースジャパン株式会社
2024.03.07
「アイデアと信念で環境課題に切り込む」京都発ベンチャー 万博から世界へ Vol.1
「これからの未利用間伐材を活用したベンチ」試作品

伐採後に残される大量の木切れや葉、樹皮を活用した独自技術で環境問題に挑んだベンチャー企業が京都にある。物流総合商社の「エースジャパン」だ。この技術をテコに、Co-Design Challengeでは最多の2000脚のベンチを万博会場に提供する。提案したのは「これからの未利用間伐材を活用したベンチ」。信念で道を切り開き、万博から世界を見据える起業家の思いとは。

2010年4月、エースジャパンは京都府精華町で産声をあげた。判藤慶太がちょうど不惑の年。ベンチャー育成施設内の小さな部屋から出発した。コネも、資金もなかったが、長年営業で培ったフットワークの軽さと探究心には自負があった。ビジネスの種にしたのは、荷物を載せるための輸送用パレット。ただのパレットではない。原料は、山林や公園、街路樹の下に落ちている、木切れや樹皮、葉っぱたち。木を伐採した後に出る大量の未利用木材だ。

思いついたのは、起業する数年前。山道で車を走らせていた時、間伐後の大量の木切れが山肌を覆い、道にまではみ出している光景を目にした。土の堆肥(たいひ)にもなると聞くが、あまりに多いと山腹の水流をせき止めたり、ほかの木の成長を阻害したり、悪影響がでるのではないか。けいはんな学研都市(正式名称:関西文化学術研究都市)を通じて京都府の担当課へ質問を投げかけたとき、連携先となる京都府森林組合連合会を紹介される。伐採した材木のなかでも枝や葉、梢などは使い道がないとされ、森林内に放置されていると知り、これは使えるのではないかと思い、研究開発に着手することとなった。息の長い解決策につなげるには、活用法をビジネス化するしかない。

大量の未利用木材をさばけるアイテムを考えていた時、行き当たったのがパレットだった。ドライバーの負担軽減につなげようと生産の伸びが顕著なことに加え、当時木材が7割を占め、使い捨てが問題にもなっていた。「うまくいけば、いろいろな困りごとを一挙に解決できる。ビジネスと社会貢献を両立させられる」。判藤にひらめきが走った。

しかし、ここからが産みの苦しみの連続だった。細かい木切れや樹皮、葉を1トン以上の荷重に耐え得る板に成型するには、粉砕機でチップにし、様々な工程を経て最終プレス機で圧縮する製法が考えられた。そのためには、特殊な金型とプレス機が必要だ。

協力者を探し歩いた。だが、どこへ行っても、「木切れを固めたところで、輸送用に使えるほどの強度なんて出せるわけない」と一笑に付された。つてを頼っては、東京、名古屋、静岡、広島と各地を飛び回り、無駄足の連続に落胆する日々が続いた。業界内を当たり尽くし、断られた先は30社程に及んだ。あきらめかけていた、その時、大阪府東大阪市に住む一人の熟練工に出会った。
Vol.2へ続く

エースジャパン代表取締役 判藤 慶太さん
エースジャパンの社員とベンチの仕様について語り合う

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