象印マホービン株式会社
2024.11.21
「マイボトルがつくるサステナブルな未来」魔法瓶メーカー 次の100年を描く Vol. 3
マイボトル洗浄機の試作品

新しいカテゴリーとして世の中に誕生させようとしている「マイボトル洗浄機」も、洗浄機構などメカニックな部分の開発にはめどが立ちつつあった。次のステップはデザインだ。担当する新事業開発室の小谷啓人の格闘が始まった。

小谷が前部署で手掛けていたのは屋内で使う比較的小型な家電のデザインだったが、今回は屋外仕様の大きな自立型という難題に立ち向かう必要があった。円形のドーム型デザインなど、いくつかの候補案が出ては消えた。「面白くないなあ」。定年後にシニアアドバイザーとして参画した熊谷浩志がつぶやいた。前法務知財部長で、過去には商品の設計開発に長く携わり、タイのボトル生産工場に勤務したこともある。そんな経験豊富な熊谷のアドバイスで、デザインが動きだした。「シンプル」の追求から、「カッコいいものは目指さない。個性を出して象印の爪痕を残す」へ。「オモシロ」がキーワードになった。

3DCAD(3次元コンピューター利用設計)デザインを基に段ボールで実寸サイズの試作も行った。構造と使い勝手を突き詰めてたどり着いたのが、今回のデザインだ。「試行錯誤する中で卓上ポット(まほうびん)のような形に見えた瞬間があり、なんだか象印らしいなと感じたので、それからは密かに“まほうびんの妖精”と呼んでいる。」と小谷は言う。

目指すべきコンセプトが見えてきた。更には「サイドパネルに木材を使ってみたらどうだろう」という岩本の発言をきっかけに、Co-Design Challengeに参加する「吉野と暮らす会」(奈良県)との連携が生まれ、吉野産の木材を使う検討を始めた。万博期間の6か月、屋外での使用に耐えられるかの検証を進めている。

洗浄機は、万博会場の給水機の横に10か所置かれる予定だ。まだ世の中に馴染みのない機械であるため、果たしてこれが何者なのか、気付いてもらって、使ってもらわなければならない。そのため洗浄機の後ろに「マイボトルステーション」と書かれたサインパネルを設置し、遠くからでも認知してもらえるよう検討中だ。

誰もが使ったことがない製品だけに、使用方法を示す液晶部分も重要だ。外国の方にも分かりやすく、子どもたちには興味を持ってもらえるような表示にできないか。タイトなスケジュールの中、アイデアを絞り出している。

新事業開発室長の岩本は「マイボトルのメーカーとして、買ってもらって終わりではなく、継続して快適に使ってもらえるところまで責任を持ちたい。洗浄機はその環境づくりの一環だ」と狙いを話す。万博は、晴れの場であり「壮大な実証実験の場」でもある。マイボトルが当たり前になる世界を実現したい。超えるべきハードルは高いが、その先を見据えて立ち向かっていく。

プロジェクトメンバー(左から)岩本さん、小谷さん、熊谷さん
マイボトル洗浄機の試作品について打ち合わせをする様子

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