株式会社友安製作所
2024.11.22
町工場の廃材がアートに変身。随所に光る八尾のスゴ技・底力 Vol.2
友安製作所工場で溶接を体験する様子

友安製作所は「ワイワイガヤガヤ」、ざっくばらんな雰囲気の会社だ。社長も含め社内では全員がビジネスネームで呼び合う。社長は「Boss」で、松尾は「Will」。製造現場では、力こぶ自慢の「Popeye」が、軽々とボンベを転がしていく。

そんな友安製作所が中心となって手掛ける、万博に提供するスツールが、通り一遍のものであるはずがない。「この世に1個しかないものを」。個展などで作品を発表しているアーティストからは4脚の斬新なスケッチが持ちこまれた。万博会場でも間違いなく異彩を放つ物品となる予定だ。

このスケッチを形に仕上げていくのは、町工場の出番だ。物品に使われるポリカーボネートの端材、アルミニウムの削りチップ、金属の円形の端材、金網などの素材を各企業から集める。デザインありきのスケッチを熟練の職人たちが知恵を出し腕によりをかけて、実用性も備えた物品に仕上げていく。年内には試作品が完成する予定で、家具工場で耐荷重試験を行うなど安全面にも抜かりはない。むき出しのカーテンレールを多用するテーブルはさらにとがった物品となりそうで、着々と構想を練っている。

体験企画では、「一芸」をテーマに町工場を巡るツアーを実施する予定だ。町工場を巡り、溶接やプレス機の操作など、ここでしかできない体験を通じて、「ものづくり」の最前線を感じ取り、堪能してもらうのが狙いだ。車のパーツの金型を作るのに使われる1600トンもの巨大なプレス機。稼働すれば地鳴りがするような機械も、工場の中では日常に過ぎない。一転、外部の目で見れば、そこは非日常でカッコいい景色に変わる。普段は黒子の職人たちがヒーローとなり躍動する。

「熟練の職人仕事や大きな機械が動く瞬間は、なかなか見ることができない。製品になってしまえば、町工場が技術を注ぎ込んだ部品の持つ背景価値がそぎ落とされて、見えなくなり、消費者にはなかなか伝わらない。見せることが価値づくりになる。どんどん発信していきたい」と松尾は言う。参加する町工場91社の思いも背負って、無理難題のプロジェクトと向き合う。「でもそれをやれるのは、この町くらいしかない」。松尾の覚悟は決まった。

スツールのデザインについて打ち合わせする様子
体験企画でも予定される友安製作所工場での木材加工の様子

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