株式会社W TOKYO
2024.03.12
「TGCの発信力で地方の技術を世界へ」 水問題解決の突破口 バイオトイレ Vol.1
「東京ガールズコレクション」を企画運営する「W TOKYO」

SDGs(持続可能な開発目標)推進と地方創生。大きな二つの社会課題と若い世代を結び付け、独自のプロデュース力で次世代を見据える企業がある。「東京ガールズコレクション(TGC)」を企画運営する「W TOKYO」だ。大阪・関西万博では、地方発の技術を生かした「サーキュラーバイオトイレ」をデザインし、世界に向けて発信する。

2018年5月31日。米ニューヨークの国連本部はいつになく華やかな雰囲気に包まれていた。会議棟4階の会場に設営されたのはランウェー。日本を代表するモデルたちが颯爽(さっそう)と歩き、ポーズを決めていく。バックスクリーンには、「ジェンダー平等を実現しよう」などSDGsの17ゴールが大きく映し出された。この模様は出演者のSNSで瞬く間に広がり、百数十万人もの若者たちが動画を視聴した。国連とファッションショー。意外な組み合わせが引き起こしたうれしい化学反応に、国連関係者は口々に感嘆の声を上げた。

「圧倒的な発信力で若者と社会課題をつなぎ、唯一無二のプラットフォームだと感じた。その力で故郷の山梨に恩返しできるような企画を手掛けたいと思い、迷わず就職を決めた」。翌19年、W TOKYOに入社した淺川万葉は志望動機を語る。

淺川は大学時代、インバウンドを主軸にした観光まちづくりを専攻。就職活動を始めた頃、W TOKYOの「TGC地方創生プロジェクト」を知った。世界へと目を向ける一方で、地方が抱える足元の課題にも向き合う姿勢に魅力を感じた。このプロジェクトは、国内最大級のファッションイベントに育ったTGCをあえて地方で開催。トップモデルや女優、歌手、芸人ら日本屈指の人気を誇る出演者たちが、ランウェーで特産品を身に付けたり、地域住民と交流したりして、ご当地情報を全国に発信する。15年にスタートし、北九州市を皮切りに広島、富山、静岡、山梨県甲府市などの各地に波及した。

「きっかけは福井県鯖江市のメガネだった」。プロジェクト責任者の田嶋康弘は振り返る。まだ東京だけで開催していた09年。経済産業省とのプログラムの一環で、TGCのなかで鯖江のメガネづくりの技術を紹介する場面があった。国内約96%、世界でも約20%のメガネフレームが鯖江産というシェアも驚きだったが、細部にまでこだわる職人たちの誇りや信念に触れるうち、地方に息づく工芸技術や特産品を埋もれさせず、自分たちの強みで発掘、応援できないだろうか。地方に目を向ける原点となった。

以来、各地に赴くなかで、地方独自のきらりと光る産業技術に出会う機会に恵まれた。その一つに、微生物の働きで汚水を浄化し、洗浄水にリサイクルする装置を備えた自己完結型バイオトイレの開発があった。
Vol.2に続く

W TOKYO ソリューション事業局 淺川 万葉さん
W TOKYO 地方創生・SDGs管掌 田嶋 康弘さん

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