甲子化学工業株式会社
2025.01.07
「ホタテの貝殻が防災ヘルメットに」 モノづくりの楽しさで課題解決に挑む Vol.3
ホタメット

 モノづくりの挑戦はゴールが見えてきた。南原は、一目で貝殻とわかるホタメットのデザインをいかすため「オーシャンブルー」「コーラルホワイト」など、海にまつわる5色を用意。白いつぶつぶをあえて残し、貝殻を感じてもらえる肌触りにもした。「作り手の目線じゃなく、受け手から見てどうかを強く意識した」

 そんな南原の背中を押すできごとがあった。2023年4月、改正道路交通法が施行され、すべての自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されたのだ。思いがけず「ホタメットは自転車で使えますか」という問い合わせが舞い込み始めた。「もちろん使える」。落ちてくる物から頭を守る防災用に対し、自転車用は転んだ時のため全方向の強さが求められる。その強さには自信がある。自転車用なら日常使いでき、より多くの人に受け入れられやすい。ずっと「消費者がヘルメットに興味を持ってくれるだろうか」と不安だった南原には、チャンスだった。自転車用をオンライン通販で出品すると、防災用とともにたちまち人気に。防災用は万博の会期中、フューチャーライフヴィレッジ内に常備される。新たに加わった自転車用も納品されることが決まった。未来に向けたモビリティーに試乗するスタッフたちがかぶる予定だ。

 Co-Design Challengeに採用され、プロジェクトはヨコの広がりを見せている。素材が海外で「SHELLTEC」の名で知られるようになり、韓国、中国、アメリカの団体から協働したいとの連絡が入った。貝を食べる文化のある国では、日本と同じように捨てられる貝殻の使い道を探していたのだ。まさに、世界中の社会課題を解決する一手になりつつある、といえる。タテの広がりも見えてきた。独自の技術力を評価する雑貨、家電、自動車の業界から共創の求めが相次ぐ。さまざまな分野で活用されれば貝殻の再生量はぐんと増えるだろう。「猿払村だけでなく、日本中の問題を解決していきたい」と、南原は意気込む。

 地元・関西で開かれる万博を、モノづくりの底力を披露する「夢の舞台」だと感じずにはいられない。「ぼくら中小企業が支える側として参加して一緒に万博を作っている。すごくやりがいがある」。その姿が日本の町工場の人たちの励みになるよう、集まってくれた仲間たちとともに、さらに前へ、前へと進んでいく。

企画開発部 部長 南原 徹也さん
「ホタメット」を手に打ち合わせをする様子

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