制作チームが伝える「One World, One Planet.」の楽しみ方!〜第3回催事企画プロデューサー・小橋賢児さんに想いを聞いてみた〜

催事企画プロデューサー 小橋 賢児さん(「One World, One Planet. Square」前)

みなさん、こんにちは!「One World, One Planet.」制作チームです。

万博の夜空を彩るドローンショーでおなじみの「One World, One Planet.」について、3回にわたって、イベントをもっと楽しんでいただける情報をお届けしているこの企画ですが、最終回となる今回は、催事企画プロデューサーである小橋賢児さんに、ショーに込められた深い想いとメッセージについてお話を伺いました。
第1回(「One World, One Planet.」の誕生秘話・概要について)、第2回(「願いの投稿」について)の記事もぜひご覧ください。

「One World, One Planet.」に込められた願い 「願いのモーメントとは?」

―まず、このセレモニーの根幹にある「地球共感覚」というコンセプトについて教えてください。

小橋: 大阪・関西万博の催事全体のコンセプトが「その一歩が、未来を動かす。」で、主催者催事のコンセプトが「地球共感覚」です。それは、太古の時代、人間が自然と切り離されていなかった頃に持っていたであろう、万物との一体感。その「魂の記憶」を呼び覚ますきっかけになれば、という想いです。物理的にではなく、意識の世界でみんなが繋がること。それが最も大事だと考えています。

―なぜ「願い」にフォーカスしたのでしょうか?

小橋:はい。「僕らのこの世界は、人々の『願い』が作っているんじゃないか」という思いが根底にあります。良いことも悪いことも含めて、この世界は誰かの願いの集合体だと考えています。そして、大阪・関西万博のコンセプトは「未来社会の実験場」です。 この万博という場所を一つの壮大な実験場と捉えたとき、半年間という期間の中で、万博をきっかけに、みんなが他者のことを思ったり、この先の未来のことを思うポジティブな願いが集まり繋がり合うことで、この現実世界を変えられるんじゃないか、と考えました。

―「利他」ということをとても大事にされていますよね。

小橋: はい。現代は、どうしても自分を優先する「利己的」な世界になり、少し綻びが生じているように感じます。本来、私たちは万物に対して「利他的」な精神を持っていたはずです。そこで、誰か他者のために、という「利他的な世界」をこの万博で作ってみたい、という思いがありました。 来場者の皆さんから願いを投稿していただくのも、自分のためだけでなく、平和など、他者のことを思いやれるきっかけになれば、という試みでもあります。そのように「考える」こと自体に、大きな意味があると思っています。

―ここまで会期中、セレモニーをやってみて、どのように感じておられますか?

小橋: 最初はドローンショーのイメージが強すぎて、なかなかみんなに意識いただけなかったんですけど、ドローンショーの中でも、願いを投稿いただけるQRコードを表示するなど試行錯誤した結果、「願いのモーメントなんだ」と理解されるようになったと感じています。これは目に見える形ではないんですけど、例えばあのドローンを見ながら、自分がもし願いを投稿していたら、「ああ、あの願い…」と、流れ星に思いを馳せるのと同じような感じで、自分の願いを思いながら見ているとかがあるかもしれません。逆に、あれは誰かの願いなんだなと思いながら見る人もいるんじゃないのかなと。そういうモーメントをみんなで共有していることに意味があるんじゃないかと思ってます。

ドローン、プロジェクションマッピング、VR、音楽それぞれの体験に込めた想い

―ショーは多様な演出で構成されていますが、全体で目指したことは何ですか?

小橋: 「ある決まった時刻になったら、万博会場が一つになる」ということです。会場にいる人々が、同じ時間に同じものを体験し、思い思いに感じる。その一体感を作りたかった。そのために、会場全体の音響インフラをすべてジャックし、同じ音楽が流れるようにしています。空を見上げればドローンショーも見られます。人と空間が繋がっていることを感じてほしかったのです。今までの万博史上、ある一定の時刻にみんなが一つになるっていう時間は、なかなかなかったと思います。いろんな所でみんなが同じものを見て聞いて感じているというのは、地球の裏側でこの星や月を見ているんだな、という感覚に近いんじゃないかなと。

―音楽やドローンの演出には、どんなこだわりが?

小橋: 毎日続くセレモニーだからこそ「余白」を大切にしました。音楽もドローンの動きも、あえて主張しすぎず、抽象的にしています。キャラクターなど具体的な形にしてしまうと、見た人は「あれだ」と受け身になってしまいますが、抽象的にすることで、見る人自身の心の状態やその日の天気によっても感じ方が変わるんです。受け身ではなく、能動的に「感じて、考えて、気づく」体験を促したかったのです。

―プロジェクションマッピングやVRでは、また違う体験ができるのでしょうか?

小橋: プロジェクションマッピングが行われる場所からはドローンが見えないため、全く違う描き方をしています。ドローンがメタファー的で抽象的なのに対し、プロジェクションマッピングはもう少し具体的な映像で物語を展開しています。ドローンを見た後にこちらを見ると、「ああ、そういうことだったのかも」と新たな発見があるかもしれません。 また、「バーチャル万博」アプリでは、ドローンとプロジェクションマッピングを一緒に見ることができたり、VR版のRITA(One World, One Planet.に登場するキャラクター)に出会えたり、また違った体験ができます。リアルとバーチャルを行き来することで、ご自身の感覚が変わっていくのも面白いと思います。

「One World, One Planet.」を通して伝えたいメッセージ

―このセレモニーを通して、最も伝えたいことは何でしょうか?

小橋: 万博はあくまで半年間の「実験」の場所です。ここで得た体験や気づき、あるいは意識の変化を、ぜひ自分たちの日常世界に持ち帰って、新しい未来を作るきっかけにしてほしいと思っています。究極的には、この万博での試みが、小さな村や町といったコミュニティに広がっていくといいな、と。例えば、誰かの「こうだったらいいな」という願いを、「それなら私が手伝えるよ」と、みんなで助け合う「共助」の世界です。見返りを求めない「ペイ・フォワード」のような関係性が、小さなところから生まれていったら素敵ですよね。

万博へ来られる人や、万博全体を通してのメッセージ

―最後に、万博に来場される方々へメッセージをお願いします。

小橋: まず、お子さんたちにこそ、この体験を感じてほしいです。子どもたちは理屈ではなく、無意識で多くのことを感じ取っています。普段忙しいお父さんやお母さんが、このショーを見て心が動かされる表情を隣で見るだけでも、子どもたちの心には大きなものが残るはずです。会期も残りわずかとなってきました。ドローンショーは天候に左右されますが、もし見られなかったとしても、その日にはその日にしかない出会いや気づきが必ずあります。計画通りにいかなくても、そこで偶然見つけたものを楽しむ気持ちで、自分だけの「きっかけ」を見つけてほしいなと思います。 
また、万博全体でも同じように、一番大事なのはこういう多様なコンテンツ、多様な国の人たちが連なる場所で起きるセレンディピティです。自分の目的にかなわなかったとしても、一輪の花を、ぜひ自分なりに見つけてほしいなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。「One World, One Planet.」 このひとときを、皆さまの心に残る特別な体験としていただけたらと思います。
以下のQRコードから、願いの投稿にもぜひ参加してみてください。

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